二宮和也のダークヒーローぶりが炸裂 「ブラックペアン」第1話
ここまでは、よくある医療エンタメドラマの展開といって差し支えないかもしれない。しかし、本作の工夫はキャスティングの妙にある。治験コーディネーターの木下香織(加藤綾子)、医療ジャーナル誌編集長・池永英人(加藤浩次)、渡海に協力的な立場の看護師、猫田麻里(趣里)の存在感にも思わず釘付けだ。脇役のひとりひとりにまで、通常のテレビドラマとは異なる、アナウンサーや芸人を配置することによって、より二宮和也、内野聖陽といった演技派のベテラン勢が際立つ。
第1話で特筆すべきは、山村紅葉が演じた患者の皆川妙子だっただろう。2時間ドラマの女王は、病室に横たわりながらも凄まじい怖気を放っていた。弱り切った患者のボロボロメイクの山村紅葉には、真の女優魂を感じた。窓の外の桜をうつろに眺め、手術を待ちながらぶつぶつと何かつぶやく山村紅葉。正直言って気が気でなかった。まあ、展開上助かることは予想が付いていたが、もし紅葉が死んだら、医療ドラマじゃなくて2時間サスペンスになっちゃうよ! 赤い霊柩車来ちゃうよ! 頼むから渡海先生、紅葉を助けて! と必死に筆者が祈った甲斐あって、妙子こと山村紅葉は一命を取り留めたのであった。ほっとした。
このように「ブラックペアン」は、実は相当攻めたキャスティングのドラマなのである。こうした楽しみ方もアリだろう。
さて、公式HPや駅貼りポスターなどでのメインビジュアルにもなっている、血判とも言うべき渡海の手形。これは、皆川を助けてほしいと懇願した世良に、手術の成功後「一生俺のもとで働け」と言い放った後に、血まみれの右手を世良の手術着に叩き付け、手形を付けたことから来ていると思われる。この仕草、なんと二宮のアドリブだったというから驚きである。人を食ったように唇の端を歪めて笑う渡海、オペ室でおろおろするだけの高階に怒鳴りつける渡海(衣装のマスク越しでよくあれだけの迫力が出せるものだ)、熱血タイプの世良に「邪魔」と冷たく言い放つ渡海。よくぞ俳優二宮和也の引き出しをここまで大盤振る舞いしてくれるものである。
大学病院の権力闘争とは別の、もうひとつの見所は、研修医・世良がどのように成長していくかだ。渡海のもとで働くことを約束させられた世良が、反発しながらも凄腕の外科医から何を学ぶか……。そして、佐伯教授の持つ「ブラックペアン」にも、渡海は何か特別な執着を抱いているようだ。佐伯にだけ使うことが許された「ブラックペアン」をめぐる因縁から、第2話以降も目が離せない。
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