「山辺節子」判決手記 借金返済のため架空投資、若いツバメとタイ逃避行…支配した“生き物”の正体

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“生き物”の正体

 一体、“生き物”とは何なのか。ここで彼女はさらりとその正体を明かす。

〈母親はきっと気付いていたはずだ。小さい体によからぬ物が宿っていることを。この生き物は男には見えない。反対に女にはしっかり見えているのだ〉

〈なぜあの生き物は住みついたのだろうか。幼い私のどこにすさまじいまでの虚栄が、脈打っていたのだろうか〉

 自らの内にある、凄まじい虚栄心。それを彼女は“生き物”と表現していたのである。

 売れる物が底をつくと、彼女はヤミ金に手を出した。そして、ほどなくして借金の返済に窮し、ついに知人女性に投資話を持ち掛けるのだ。それは2010年11月のことだったという。

〈金を貸しての一言がどうしても言えなくて架空投資話を思い付いた〉

 その少し前、彼女はマルチビジネスの“親玉”と思しき女性に会っていた。そこで聞きかじった話をベースにして架空の投資話を作り上げたのだ。

〈数日後、彼女から30万円の振り込みがあった。この30万円を手にした時から全てのことが始まった。この金が億単位の呼び水となった〉

 最初に金を振り込んだ知人女性は次々と出資者を彼女に紹介した。中にはネットワークビジネスの経験者も多く、動かす金はすぐに巨額に膨れ上がった。

〈自分で作った架空話なのに、何度もくり返し話していると自分の耳にも入り込み不思議な錯覚に陥っていく。本当に投資先が存在するのではないかと思うほどになる。目の前に集まってくる金を見て、生き物と私は使い始める。破産後の抑圧を取り戻すかのように金を使う〉

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