「山辺節子」判決手記 スナックママから歌人、そして会社社長…男たちを手玉に取った“超女子力”

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憤慨させる出来事が

〈ハモンドオルガンの生演奏が流れるスナックや会員制クラブ。二つの店を手に入れた。33才の私はしばらく水商売を楽しんだ〉

「スナック・アゲイン」と「メンバーズクラブ・ブルーレイン」。それが彼女の店の名前だった。

〈ひとたび店に入ると、「ママ」「ママ」と声がかかる。美人の若いホステス達が色あせる瞬間が快感だった。売り上げ勘定よりいかに自分が男性に好まれるか、シナリオ通りの男性の目にとまるかだ〉

〈私は元来の美人ではないことを知っている。装いと誰にも負けない雰囲気作り、表情、声、話し方、しぐさこれらを細かく分析し、相手や場所に合わせてまるで一枚のパズル絵のように仕上げていく〉

 ママとしての暮らしに飽きると、さっさと店を売り飛ばし、“生き物”と共に次のシナリオを考える。

〈私は30代後半になっていた。男性から頂く贈り物の額もどんどん高価な品になっていった。宝石ひとつとっても、安い物で200万、気に入って買ってもらった600万円のピンクダイアモンドなど、欲しい物は何でも手に入れることが出来ていた。この頃、私は中堅クラスの会社社長と付き合っていた〉

 彼女を憤慨させる出来事が起こったのは、その社長の金で贅沢三昧をする生活に飽きてきた頃だった。何のことはない、男に浮気されてしまったのだが、その相手が、自分とは正反対の素朴な美人だったのだ。

〈努力して一代で社長になった彼は、彼女の飾らない美しさに惹かれたのだ。今から彼女が作る夕食を食べる。きっと心を込めて作るのであろう。手料理のひとつも作らず外食で金を使う私とは大違いだ。彼の中にも彼女の中にもあの生き物は住んでいない。生き物と私は新たなシナリオを書きあげた。着飾ったり雅びだったりどんな花になっても無理なら、大きく変更する必要がある。他の女性に出来ないことをしなければ彼女に勝てない〉

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