心が折れない「平尾脱獄囚」のサバイバル “衣食住”揃った島環境
イノシシ、タヌキ、ヌートリア
また、それ以外にも、食料調達の道はあって、尾道市役所の農林水産課によれば、
「昔は、島の斜面には、山を切り開いた、蜜柑など柑橘類の果物畑が並んでいました。しかし、最近は農家の高齢化が進み、荒地となった箇所も多い。そうした中には、周囲の竹林に侵食されてしまったところもある。そこでは、今の季節、タケノコがたくさん生えています。また、ゼンマイなどの山菜もありますし、畑には、絹サヤエンドウや、タマネギもなっています」
夜中にこうした場所に行けば、空腹を満たすことは可能。タケノコを山で食するとはそれなりの贅沢であろうし、ライターでもあれば炙って食べることが出来る。グルメである。
動物はどうか。
農林水産課が続けて言う。
「山には、イノシシがいますね。あとはタヌキ。もし人里に下りて行けるなら、外来種の大型ネズミ、ヌートリアも繁殖しています」
なるほど、動物性たんぱくも十分――いや、いくら何でもイノシシやタヌキを捕まえるのはまず無理だし、ヌートリアは珍味だが、やはり捕獲は難しいであろう。
「イノシシなんて捕まえるのは素人には難しいし、ヘビはまだ季節が早い」
と言うのは、地元猟友会のメンバーである。
「でも、この辺は、イチゴのハウスもあるし、畑には、はっさくなどが木になったままだったり、落ちて転がっていたりする。それで空腹を満たすことはできるでしょう」
が、一方で、山中での生活には危険も伴うという。
「イノシシなんて大きいのは200キロもありますから、向かって来たら大変です。本当はクマ鈴みたいに鳴るものを持っていればいいのですが、逃亡犯だからそうもいかないでしょう。それに山には、危険なマダニやムカデがいる。マダニは島内で何件か刺されたという話があります。死に至ることもありますから、要注意ですよね」(同)
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