カラテカ・矢部太郎『大家さんと僕』手塚治虫文化賞受賞と「週刊新潮」連載開始で“マンガ道”を語る。

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小津安二郎の映画から学んだ“技”

――エッセイコミックで短編賞を受賞したとなると、軽い印象があり、実際にそういう雰囲気もあります。でも実は、骨太のストーリー性が埋め込まれているのが面白いですよね。「週刊新潮」で本格的なストーリーマンガが連載されるのは初めてだということです。

矢部:エッセイマンガを描こうと思うと、「無限に続く日常」から題材を集めるのが普通だと思うんです。でも僕は、その逆に挑戦してみたんです。実話ベースのエッセイだけど、しっかりとした映画的な構成があるマンガにしてみたかったんですね。だから頭の中では、一冊の単行本を作るイメージしかなかったです。エンディングの明確なイメージを持っていました。

――映画といえば、小津安二郎(1903~1963)の映画を思い出す方もおられそうです。

矢部:実は描く時に、かなり見たんです。すごくシンプルに撮影していて、余計な説明がなく、淡々としているんだけど、余情が深い。そしてモノクロ、日本家屋で物語が進むという意味では、僕のマンガと同じです。すごく勉強になりました。

――1ページ8コマのシンプルなコマ割で進むところも、スクリーンの形と類似性を感じます。映画と関係があるのでしょうか?

矢部:それもあると思いますが、何よりも描くのが簡単じゃないですか(笑)。あと大家さんが『のらくろ』(田河水泡[1899~1989]:作/講談社ほか)などを愛読された世代ですので、親近感を持ってもらえるかな、とも思いました。ただ、やっぱり、こういうコマ割が好きなんだと思います。手塚賞を受賞された『夜廻り猫』(深谷かほる:作/講談社ほか)や、業田良家さんの作品も同じようなコマ割です。余韻の滲み方が共通していると思うんです。そういう作品に憧れているのかもしれないですね。

――最後に改めて、意気込みをお聞かせください。

矢部:言うのは恥ずかしいですけど、周囲の人々に助けられながら描いています。正直、単行本で描き尽くしたという想いもあるんです。もう一冊分を描くためには、これまでの作風を変える必要があるのかなとも考えています。だからこそ、これから何が始まるか、それも楽しみにしてくださると嬉しいです。

週刊新潮WEB取材班

2018年4月25日掲載

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