なぜこんなにひっそりと放送するのか?NHK「ノーナレ」(TVふうーん録)
改編前のテレビって、つまんねぇ特番が多いよね。新聞のラテ欄を開き、朝から思わず白目剥(む)いてたわ。世間が注目する証人喚問では、驚きの茶番劇が展開されてるし。なんだ、あれ。証人が「答弁控える」って意味がわからん。答弁じゃなくて嘘偽りのない証言をする場なのでは? そんな、へそで茶がまったく沸かない1週間。何を書こうか悩んでいたところ、秀逸な番組がひっそり放送。以前から気になっていたNHK総合の「ノーナレ」である。
速報羽生結弦との「105日離婚」から1年 元妻・末延麻裕子さんが胸中を告白 「大きな心を持って進んでいきたい」
ナレーションを一切入れないドキュメンタリー番組だ。ナレーションの文言は、時として制作側の思い入れを色濃く反映しちゃうので、ぼんやりしとる視聴者はつられがち。取材対象者は淡々と話したのに、ナレーションと効果音で妙に情に訴える演出になったりして。
ノーナレにはそれがない。対象者の言葉だけで展開していく25分。正直言えば、最初は物足りなさを感じた。ナレーションだけでなく、煽(あお)るようなテロップも展開予告もない。いかにこれらに毒されてきたかってことに、改めて気づかせてくれたのがノーナレだ。いわば「画像と情報の断捨離」ね。
ドキュメンタリーはこれくらいシンプルでいい。取材内容次第だが、過去放送回も対象が珍しくてよかった。北陸のすし男、ミアタリ捜査、カニ漁師、元ヤクザのうどん屋が面白かった。
ただし、レギュラーではないので放送予定が掴めず。気づいたら終わっていたことも。NHKオンデマンドでも観られない回があり、問題が起きてお蔵入りかと妄想。それもまた楽しい。
3月最終週は3日間、新作を放送。日替わりで楽しめた。「津軽 雪空港」(26日放送)は、青森空港の除雪作業に密着。迅速かつ正確に滑走路から雪を排する除雪隊・ホワイトインパルスや、丁寧な仕事で安全を守る整備士のおかげで、大雪が降っても欠航ナシ。利用者からも、航空会社からも、絶大な信頼を得ている空港業界の雄、という内容だ。
除雪はチーム作業。割と横文字多めの役割分担だが、除雪隊員の朴訥(ぼくとつ)な津軽弁で説明すると、温度が伝わる。気取った俳優のナレーションだったら絶対伝わらない。
「ラーマのつぶやき」(27日放送)には心打たれた。シリアから日本へ逃れてきた難民の家族に密着。ラーマは16歳の女子高生。喪失感と絶望感で家にこもる父、家族のために頑張って働く母。異国で暮らす不安、家族の不和、難民に対する心ない言動についても、毅然と自分の意見を話すラーマ。彼女の聡明で建設的、前向きな語りが、そのまま活かされて展開していく。まさにナレーション不要だった。
「“悪魔の医師”か“赤ひげ”か」(28日放送)は病腎(病変を取り除いた修復腎)移植の是非を問う内容。医者、患者、学者、記者と、当事者がそれぞれ思いを語る。ナレーションでまとめる必要はない。相違や対立があっても、望みはひとつ。「腎移植のドナーを増やすこと」だと伝わってくる。
次回作を心待ちにするが、お願いだから、ひっそりやらないで。もうちょっと派手に知らせておくれよ。