日ハム、高かった札幌ドーム“家賃” 500億円新球場の算盤は

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 借家と持家はどちらが得なのか。年収や税制を考えても、簡単には答えを出し難い問題だ。しかし、本誌(「週刊新潮」)が2月末に報じた“セクハラ発言”で社長が交代した日本ハムは、長年借家に住む“子供”に一戸建てを買うことに決めた。

 プロ野球の北海道日本ハムファイターズは3月27日、ホーム球場の移転先を北海道北広島市の「きたひろしま総合運動公園」にすると発表した。プロ球団のホーム球場移転は、やはりファイターズが04年に東京ドームから現在の札幌ドームへ移転して以来のことになる。

 長年、ファイターズを応援してきた札幌市民からは溜め息が聞こえてくるが、ホーム移転を支持する球界関係者は少なくない。横浜ベイスターズで監督を務めた、解説者の権藤博氏もその1人だ。

「球団経営の転換の時期に差し掛かっているので、ホーム移転は素晴らしいと思います。これまでのように親会社に頼りきりで、“高い家賃”を払っていては経営の健全化は望めません」

 12球団の経営内容の詳細は非公開だが、その多くが赤字に苦しんでいるという。東京商工リサーチ情報本部情報部の原田三寛部長によれば、

「16年12月期決算をみると、ファイターズの当期利益は約8億2400万円。3年連続で増益の“優良企業”です」

 その優良企業がホーム移転を決意した理由の1つは、権藤氏の指摘した“高い家賃”だ。スポーツ紙記者が解説する。

「自前の球場を持っている阪神タイガースや西武ライオンズなどを除くと、球場に高額な使用料を支払っています。札幌ドームの場合、基本使用料の上限は1日800万円。観客が2万人以上だと、1人につき400円が加算するので、観客4万人で1600万円を支払う計算です」

 ファイターズの札幌ドームの試合数は年50試合以上で、球場使用料など11億円以上を支払うという。

広告収入はゼロ円

 札幌ドームは株式会社だが、札幌市が筆頭株主の“第三セクター”。2年前、ファイターズは球団と選手会が札幌ドームに対して、球場使用料の引き下げや人工芝の張り替えなどを要望した。球団を“子会社”に持つある企業の役員がいうには、

「札幌ドームはその要望をほとんど聞き入れなかったので、ファイターズはホーム移転を決意したのです」

 その後、ファイターズは異例の公募形式でホーム移転の受け入れ先を探し始めたのである。

「最終的に、札幌市と北広島市に絞られました。北広島市は固定資産税の減免のみならず、親会社の日ハムが提唱する球場を始め、娯楽施設や食のテーマパークなどが併設する“ボールパーク”建設の協力も惜しまないと約束しました」(同)

 結果、人口約6万人の北広島市に軍配が上がり、日ハムは電通の協力を仰ぎ、500億円を投じて新球場建設に乗り出すことに。早ければ23年に移転するが、巨額の資金を回収できるのか。

「球場使用料を支払わなくて済み、新たな収入が生まれるので球場の設立資金は回収できるでしょう」

 こう語るのは、セ・リーグ人気球団の幹部だ。

「球団や選手の関連グッズは利幅が大きいものの、“賃貸”だと球場にピンハネされる。また、球場に設置されている企業広告も大きい。看板の設置場所によっては年間億単位になるが賃貸では球団には1円も入りません。自前の球場だとすべて球団の懐に入るので、経営が安定します」

 ダルビッシュと大谷というスター選手が抜けた今、観客動員数を伸ばし続けることがカギになる。

週刊新潮 2018年4月12日号掲載

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