新生児取り違え事件をカネで隠蔽した順天堂 被害男性は「これ以上喋れないんです…」
「そこまで知ってるの!?」
一方、取り違えられた被害者の男性は、小林義之さん=仮名=としておこう。 その自宅を訪れたが、
「お引取りください」
と、取りつく島もない。ところが何度目かの訪問で、インターホン越しに、本誌(「週刊新潮」)がつかんだ取り違え事件の概要を多少伝える機会を得た。すると、
「そこまで知ってるの!?」
と、仰天した様子が伝わってきた。記者が関係者から入手した情報をたたみかけるように伝えると、しばし躊躇したのちに、
「そこまでご存じなのなら、もう隠せないですよね。たしかに、あなたがおっしゃる通りです。もちろん、本当の親がだれなのか知りたいし、知らないままで生きていくなんて、あまりに苦しいと思っている。もう80歳近い母も、本当の息子に会いたくて仕方ないんだけど、このままでは間に合わないかもしれません。でもね、順天堂との約束があるから、あなたにこれ以上は喋れないんです」
小林さんが喋れないなら、順天堂が過去の事件を公にし、入れ替わった2人がいまからでも人生を取り戻せるように力を尽くすことこそ、医療者の倫理というものではないだろうか。
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