新生児取り違え事件をカネで隠蔽した順天堂 被害男性は「これ以上喋れないんです…」

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拒絶が生むトラウマ

 iPhoneのロック画面でホームボタンを長押しし、内蔵されているSiriという人工知能に向かって「私はだれ?」と話しかけると、自分の名前や連絡先などの個人情報が表示される。だが、この男性にとって、表示された情報は虚しいだけではないだろうか。なぜなら、「私」が「だれ」であるのか、彼にはもはやわからないからだ。

 ところが、この男性は順天堂によって、いわば根無し草にされた挙句、放置されている。精神科医の和田秀樹氏は、

「それなりに生きたうえで取り違えの事実を知らされ、本当なら豊かな家庭でちゃんと教育を受けられたかもしれないのに、と思ったときには、大変なショックや取り返せないという怒りを覚える可能性があります」

 と指摘しつつ、生育環境による悪影響のほうが大きいと、こう続ける。

「親に似ていない子や、兄弟で一人だけ顔が違う子がいたりすると、取り違えでなくても、夫が妻の浮気を疑ったりしてしまいかねません。また、人間は感覚的に、絶対に血がつながっていると思える子には愛情をかけられますが、顔が似ていなかったりすると、愛情が疎かになってしまう可能性がある。そういうふうに育てられると、無力感に支配されかねません」

 どういうことか。

「たとえばレイプ被害を受けた人が、訴えても全然相手にされなかったりすると、その人のトラウマが大きくなったりする。取り違えは表向き“ないこと”になっているのでガイドラインがなく、病院側はプライバシーを理由に突っぱねられるのだと思いますが、精神科医として言えるのは、“知りたい”という思いを拒絶されることで、さらにトラウマになってしまう、ということです」

 順天堂ほどの名門の大病院が、そのことを知らないはずもあるまい。

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