新生児取り違え事件をカネで隠蔽した順天堂 被害男性は「これ以上喋れないんです…」

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闇に葬られた順天堂「新生児取り違え事件」(下)

 順天堂大学医学部附属順天堂医院で半世紀ほど前に起きていた、新生児の取り違え事件。順天堂関係者の証言によれば、一昨年頃の時点で、被害者である都内在住の男性に対し、病院側は取り違えを認めていたという。「男性と母親は顔も似ていなければ、性格も違っていて、ご両親の離婚も男性の血液型のせいだと、だれかに告げられたこともあったんだそうです」(関係者)。この事件がこれまで一切公表されなかった背景には、順天堂による“隠蔽”があった。(※以下の内容は「週刊新潮」4月12日号掲載時点のもの)

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 言うまでもないが、新生児の取り違え事故が1件あれば、取り違えられ、本来とは別の人生を歩まざるをえなくなった人は、必ず2人いることになる。

 この男性が、育ての親と顔も性格も似ていないのであれば、もう一方の被害者も、引き取られた先の親や兄弟と容姿も性質も異なっていたであろうことは、容易に想像がつく。「みにくいアヒルの子」よろしく大きなハレーションが起きていたとしても、なんら不思議ではない。

 だが、順天堂の関係者はこう語る。

「その男性は順天堂医院を訪れて、本当の親に会いたいと訴えたのですが、順天堂側はそれを拒んだのです。しかも、“取り違えられたもう一方は平穏に暮らしている可能性が高いのに、それを壊してはいけない”というのがその理由です。そして、男性に金銭での解決を提案し、和解金を支払う代わりに、取り違えがあったことを一切口外せず、もう一方の相手を探さないことを約束させた。最終的に男性は押し切られてしまった格好です」

 病院は相手を探すことに協力してもよかったのではないか、という思いを、関係者は滲ませるのである。

 男性に対する順天堂の対応は、倫理的にどう評価されうるのだろうか。医療事故に詳しい田村勇人弁護士に尋ねると、

「病院側が勝手な判断で患者の個人情報を開示すると、情報を曝されたほうの家族から、損害賠償請求をされる可能性があります。それを避けたいのでしょう。また、取り違えの事実が明るみに出て、もう一方の家族が名乗り出た場合、病院側はそちらの家族にも賠償金を払わなければいけなくなる。単純に倍のお金がかかりますからね」

 そう言いつつ、病院に注文をつける。

「その男性の方が、もう一人を見つけたいというのであれば、病院はできるかぎりの協力はして然るべきだと思います。法的に義務が生じるかどうかは判断しかねますが、人としてというか、倫理的にはそうすべきではないでしょうか」

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