ブナの木に潰された名車「トヨタ2000GT」 修理代は1億円以上で廃車の悲劇

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部品だけで新車が買える

 半世紀前とはいえ、新車価格238万円の車の損害賠償に1787万円である。高いと見るか、安いと見るか――。

「安い! あの状態ですと、走れる状態にするまでには、5000~6000万円はかかるでしょうから。まあ開けてみたら、もっと高くつくかもしれませんけど。あの2000GTは初期型の右ハンドル仕様ですから人気もある。できれば、残して欲しいけどね」

 とは前出・ヨシノ自販の芳野社長である。あれほどペシャンコになった車が直るのだろうか?

「ええ、元に戻りますよ。金と時間はかかりますけど」

 こともなげに言うのである。

「ただ、事故の時にあれほど報道されてしまいましたからね。ナンバーまで出したところもある。こういう名車というものは、修理は水面下でするものなんです。傷物扱いされてしまいますから。せっかく直しても、再び売るとなると、価格は下がってしまうんです」

 現在、かの2000GTは、事故当時のままガレージに納まっているという。

「他の2000GTのための部品取りになるでしょうね。ザックリ言って500~600万円ほどにはなるんじゃないでしょうか。ボディの一部、エンジンや足回り、メーター周りなどは、まだ十分使えると思いますよ」(芳野社長)

 部品だけでも新車が買える価値があるようだ。

国内で減る2000GT

「そりゃあね、2000GTは最高で1億円以上の値がついたこともありますから。あの事故の時、NHKがトップニュースで報じたほどです。新車のベンツだって、そんなニュースにはならないでしょ。うちでは8000万円で販売していますよ。かつては『右ハンドルの2000GTの9割方は日本国内にある』と言われていましたが、いまでは100台ちょっとしか残っていないかもしれませんね。数年前から外国人バイヤーが買っていくようになったんですよ。中国人が多いかな。それをドバイあたりで陸揚げして、さらに欧州へ転売するというパターン。それのため日本国内の2000GTも減ってきているわけです。そんな時に、貴重な1台がまた減ったということなんですよ」(芳野社長)

 大破した2000GTのオーナーは、こうコメントを寄せた。

「希少価値のある車がこのような事故で大破したのは大変残念だが、被害が一定程度回復され、ホッとしています。この和解をきっかけに、全国で道路沿道の樹木の管理体制が少しでも見直されることになればいいと思います」

 罪を憎んで……嗚呼もったいない、もったいない。

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週刊新潮WEB取材班

2018年4月11日掲載

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