“脱獄囚”発生の「松山刑務所大井造船作業場」 実は「恐怖の刑務所」

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再犯率は低いが逃走も多い

「塀のない刑務所」という表現に、驚いた方も多いだろう。4月8日午後6時ごろ、窃盗罪などで服役中の平尾龍磨受刑者(27)が、松山刑務所・大井造船作業場(愛媛県今治市)から逃走した。

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 開設は1961年というから歴史は古い。「再建王」の異名のあった実業家、故・坪内寿夫(1914~99)が、自身の所有していた造船所(現在は「新来島どっく大西工場」)内に、松山刑務所と協力して日本で唯一「塀のない刑務所」を作ったことが原点だ。

 受刑者は寮で生活し、造船所で働く作業員と共に汗を流す。寮の窓に鉄格子さえ存在せず、鍵もかかっていない。法務省の資料には、

・受刑者自身の責任と自立的な行動によって規律の遵守を確保する
・可能な限り一般社会生活に近似した環境において社会復帰のための有効な処遇を実現する

ことを目的としたと書かれている。当時はもとより現在でも「前例のない先駆的な」刑務所として、全世界から見学者が訪れるという。

 特徴は再犯率の低さだ。2012年、交通事故の過失犯を除いた一般刑法犯の再犯率は45.3%。それに対して大井造船作業場では10年から15年の平均再犯率は2.2%と著しく低い。

 一方で、脱走の多い刑務所としても知られている。開所以降、今回の平尾容疑者を含めて17件20人の受刑囚が逃げ出した。生活態度が良好で、逃走や自殺を図ったことのない“模範囚の中の模範囚”を選んでいるにもかかわらず、だ。

 しかも94年には、当時29歳の受刑囚が、逃走中に女子大生を拉致するなどの凶悪事件を引き起こし、逮捕後の一審で福岡地裁は懲役14年を言い渡している。

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