なぜ子供も大人も「スタンプラリー」にハマるのか――彼らを虜にする秘密
人間の“本能”を刺激するゲーム性
JR東日本の東京支社は夏と冬の2回、大規模なスタンプラリーを実施している。ここ数年、夏は子供向けで、冬は大人向けとしてきたそうだ。そのため昨年の夏は「JR東日本 ポケモンスタンプラリー2017」が実施され、今年の冬がガンダムだった。
JR東日本東京支社営業部販売課宣伝グループの釜石直裕さん(29)は、この「ガンダムスタンプラリー」で、初めてラリーの企画責任者となった。そして「大変な仕事でした」と振り返る。
「今回の冬のラリーでは、メインのターゲットは40代から50代で、懐古感を楽しんでいただくのが目標です。スタンプを集めることで童心に返ってもらい、普段足を運ぶことがない沿線や駅前の光景を発見していただきたいという想いを込めました。そのためにも、まずは『機動戦士ガンダム』を全話見ることから始めました。そして著作権の折衝を重ねたり、コースを設定したりします。更にスタンプのデザインからポスターの作成など、やらなければいけないことは山のようにありました。同僚や上司のアドバイスを受けましたが、本当に激務でしたね」(釜石さん)
参加者は当然ながら、自腹を切って運賃を支払い、スタンプを集めていく。JR東日本東京支社には利益がもたらされるわけだが、もちろん売上全体に占める割合は大きくはないかもしれない。
そうなると利益が最大の目的ではないのだが、では何のために、JR東日本東京支社はスタンプラリーを実施しているのか? その理由を釜石さんは「JR東日本のファンになってもらいたいため」と説明する。
「スタンプラリーでは、各駅が手作りのポスターを張り出したりするなど、アナログ感あふれる宣伝が展開されました。それが話題になって、SNSなどのデジタルツールで拡散していく。その対比も興味深いのですが、『JRという会社も、なかなか面白いことをしている会社なんだな』と思ってもらうことが究極の目標だと思っています」
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