自民「マタハラ発言」議員 過去には“うさん臭い起業家”への投資を勧誘
自民党の白須賀(しらすか)貴樹衆院議員の名が取り沙汰されたのは、先月末。自身が運営する保育園で採用した職員について「雇って1カ月後には実は妊娠して産休に入ると(言ってきた)。人手不足で募集したのに、それは違うだろと言った瞬間に労基(労働基準監督署)に駆け込んだ」と発言したことが、“マタニティーハラスメント”に当たる、といわれているのである。
実は白須賀議員、およそ2年半前には、別の件でその名が報じられていた。以下は「週刊新潮」2015年9月24日号が掲載した「カンボジアテレビ局の社債?? うさん臭い起業家への投資を勧誘した自民党『若手代議士』」記事である。(肩書などのデータは掲載当時のもの)
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台所でゴキブリを1匹見つけたら、家の中に100匹はいると思ったほうがいいという。
さて、永田町の話である。
妻子持ちの同僚男性議員と「路チュー」した中川郁子(ゆうこ)農水大臣政務官、終戦の日に年下女性と「デート」していた額賀福志郎元防衛庁長官、さらには未公開株トラブルを抱えて八方ふさがりの武藤貴也代議士。自民党では、不届き者の存在が相次いで発覚した。これだけ「暴れん坊」がいるということは、まだまだ隠れた問題議員がいると考えるのが普通であろう。実際……。
2014年11月18日午後、衆議院第一議員会館地下1階の第2会議室。そこには、30名ほどの企業経営者らが集っていた。時あたかも、第47回総選挙に向けて、安倍晋三総理が衆議院を解散すると宣言した当日だった。
そんな慌ただしい最中、カンボジアのリー・トーチ上級大臣が来日したのに合わせて、第2会議室ではあるセミナーが開かれていた。大臣の傍らには「社長」が鎮座。カンボジアで事業を展開する日系総合商社「トライアジアグループ」CEOの横井朋幸氏(36)である。
彼はテレビ東京の看板番組「ガイアの夜明け」で取り上げられ、また後述するが、フリーアナウンサーの滝川クリステル氏と雑誌で対談するなど、新進気鋭の起業家として脚光を浴び、昨年9月には著書『世界は僕らの挑戦を待っている』を出版。自身の経営哲学を世に広めてきた。
そんな横井氏が司会役を務めたセミナーが続くなか、ある人物が第2会議室に駆けつけた。横井氏は、彼のことを仰々しく紹介した。
「先ほど本会議を終えられて、今回、この場をお取り計(はか)らい賜(たまわ)りました白須賀貴樹衆議院議員が、今お越しになりましたので、一言、先生ご挨拶を」
白須賀氏は、自民党の2回生議員で現在40歳。安倍総理の出身派閥である細田派所属。安倍氏が率いて自民党が圧勝した12年の総選挙で、千葉13区から出馬し初当選した「安倍チルドレン」の1人である。白須賀代議士を知る地元の政界関係者が説明するには、
「彼はもともと、父親の後を継いだ歯医者さんで、母親の家も資産家だったらしく、白須賀家は現在、歯医者だけでなく幼稚園などを手広く経営。金持ち一家の印象が強く、白須賀さんの母親が、確かベンツだったと思いますが、高級車に乗ってスーパーで買い物している姿をよく見かけます。そういった環境で生活しているせいか、彼は人に物事を相談しない、独断専行のタイプですね」
何はともあれ、安倍総裁の無投票再選が決まり、党内第1派閥として栄耀栄華を極める細田派の“若手ホープ”白須賀氏は、横井氏に促されると、セミナーでこう熱弁を振るった。
「私の盟友でございまして、そして親友でございます横井社長のために、たくさんお集まりいただきまして心より感謝申し上げます」
「私は横井社長を見ていつも思います。彼こそ、本当に我が国の若者が誇る、これから『和僑』となって東南アジアに進むべき人間のひとりであると、私は心から、私の保証をもって発言させていただきます。なぜならば、私は1口(10万ドル、約1200万円)、もう出させていただきました」
ここで横井氏が補足。
「私どもテレビ局のほうにご出資を、先生自ら」
要は白須賀氏は、横井氏がカンボジアで行っているテレビ局に投資したというのである。
そして白須賀氏は続けた。
「我が国の豊かな国力を維持していくためにはどうするべきか。その先駆けとして、今、横井社長が単身で頑張られております。今、横井社長に対して私たちはさまざまなご支援をしておりますが、どうか、今日、お集まりの皆さま方も、横井社長を信じてお力を貸してください。よろしくお願い申し上げます」
セミナーでの白須賀氏の主張をまとめてみる。
「親友」である横井氏のことは私が「保証」する。よって一彼を「信じてお力を貸して」ほしい。何を隠そう、既に私自身が1口投資しているのだから――こういうことになる。ちなみに、
「セミナー当日の午前中に、トーチ大臣と横井氏は総理官邸で菅義偉官房長官と面会。セッティングしたのは白須賀さんで、彼もその場に同席していました」(トライアジア関係者)
権威と権力を誇る与党代議士が特定の民間企業に肩入れし、投資を勧誘。そしてその経営者を官房長官にも引き合わせていたのだ。
政治ジャーナリストの藤本順一氏が眉をひそめる。
「政治家が一民間企業の社長を『保証』すること自体が問題です。その上、国会の施設である議員会館において、投資を促すような発言をしていたとすれば、国会議員が特定の企業にお墨付きを与えた格好となり、政治倫理が問われます」
しかも、白須賀氏の「罪」はこれに留まらない。なぜなら、彼が「保証」した横井氏は、実は仮差押えされるトラブルを抱えた「うさん臭い起業家」だからである――。
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