「ゆうちょ銀行」貯金上限撤廃に“三つ巴”のカネ勘定
総務省によれば、2016年時点で一世帯当たりの平均貯蓄額は1820万円。その“虎の子”を預かる銀行業界と、ゆうちょ銀行の“親会社”日本郵政との間で、つばぜり合いが起きている。だが、両者の本音は随分と違うようで。
政府郵政民営化委員会の岩田一政委員長は3月15日、記者会見で日本郵政の長門正貢社長(69)からゆうちょ銀行の貯金限度額撤廃の要望があったと明かした。同じ日、全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)はこう懸念を口にしている。
「ゆうちょ銀行は先進国最大の金融機関。地方銀行などの経営に支障を来す可能性がある」
また、この前日には全国地方銀行協会の佐久間英利会長(千葉銀行頭取)も、
「ゆうちょ銀行の貯金量が民間を上回っている地域もある」
と、貯金限度額の撤廃は“民業圧迫”に繋がると指弾した。ゆうちょ銀行の貯金限度額は2年前に300万円引き上げられて、目下1300万円。限度額が撤廃されれば、民間金融機関からゆうちょ銀行へ大幅な資金シフトが起きるのは確実だという。郵政民営化委員会は4月にも結論を出す予定だが、
「銀行業界が本気で反対していたのは、マイナス金利導入前の話。今は、本音ではゆうちょ銀行の限度額撤廃を歓迎しています」
こう苦笑しながら語るのはメガバンクの行員だ。
「マイナス金利政策の影響や企業の資金需要の低下で、預金を集めても安全な運用先が見当たらず、“逆ザヤ”に陥っている地銀や第二地銀は少なくありません。ゆうちょ銀行に資金がシフトすれば、メガバンクも地銀も利息負担が軽減されますからね」
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