「李明博」を晒し者にする「文在寅」怨念政治
「李元大統領も3月14日にフォトラインに立ち、19日はついに逮捕状も請求されました」
と話すのは、在ソウルのある記者。“フォトラインに立つ”とは聞き慣れないが、韓国では新聞の見出しにも使われる一般用語なのだ。
「政治家や財界人が検察に出頭を求められると、ソウル中央地検の庁舎前に貼られた目印テープの位置に立って報道陣の撮影に応じ、コメントすることが半ば制度化しているのです」(同)
まさに晒し者同然だが、仮にも大統領だった李明博(イミョンバク)氏(76)の疑惑が注目されるのはやむを得ない。問題は、検察の捜査が文在寅(ムンジェイン)政権の意を忖度した政治報復のお先棒であることだ。
「政権に従い、世論に阿(おもね)るのが韓国司法の常道です」
と韓国事情に詳しい評論家の室谷克実氏は指摘する。
「文政権は“積弊清算(チョクペチョンサン)”をスローガンに政治改革を進めていますが、新王朝が旧王朝の制度を一掃するように、結局はすべてをご破算にしたい。まして盟友だった盧武鉉(ノムヒョン)元大統領を、今回と同じような政治的捜査で死に追いやった李氏への恨みは深いのです」
これこそ韓国政治の悪弊。韓国の人々にも歴代大統領の末路が悲惨だったことへの問題意識はある。実際、大手紙の中央日報は、「韓国大統領史の不名誉……『退任=被疑者』公式化するのか」との見出しを掲げた。
そして、文政権がいくら政治報復を否定しても、検察が李氏個人を標的に捜査していたのは明白だ。
今回、李氏の主な容疑は二つ。国家情報院の機密費に関する収賄と、実兄が会長のDAS(ダース)という自動車部品会社に関する収賄だが、この二つの事件に直接的なつながりは全くない。
「それを同時に捜査していたのが政治報復である証拠。とはいえ、李氏やその周辺が私腹を肥やしていたことも間違いないから始末が悪いですね」(同)
不名誉な報復の歴史は、まだまだ続きそうだ。