「引っ越し難民」急増で「トランクルーム業界」に問い合わせ殺到の“大混乱”

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本物の“引っ越し難民”が抱える苦境

 ところが今年の2月から3月現在にかけて、「引っ越し関連での空き状況に関する問い合わせ件数は、例年より少なくなっています」と萩原さんは明かす。

 引っ越し難民が増加すれば、問い合わせは増えそうなものだ。不思議な現象の理由を訊くと、興味深い動きが浮かび上がってきた。

「引っ越しに関連してのお問い合わせですが、4月以降の空き状況をお尋ねになるケースが増加しているんです。私どもの推測ですが、既に3月から4月にかけての引っ越しを延期した法人などが相当数にのぼっているのだと思います。従来は3月と4月が突出した山だったわけですが、それがなだらかになり、5月や6月まで伸びているイメージです」(同・萩原さん)

 加えて、深刻な問い合わせも増加傾向にある。今住んでいるところは退去が決まり、引っ越し先の新居も契約が完了している。だが、引っ越し業者が全く見つからないというケースだ。キュラーズにも切実な相談が寄せられている。

「結局、自宅からトランクルームに家財道具を移動させるにも、引っ越し業者に依頼する必要があるわけです。それで身動きが取れなくなってしまっている。いわば本当の“引っ越し難民”と言える方々です」(同・萩原さん)

 キュラーズでも引っ越し業者の紹介は行っているが、人手不足は深刻なようだ。「とにかく引っ越し業者を探すから、トランクルームの賃貸開始を1週間、先延ばししてほしい」という悲鳴のような電話もかかってきているという。そんな中、友人に手伝ってもらい、レンタカーで引越しをする方や、便利屋サービス等を利用してトランクルームへ搬入するケースなども増えている。

 このように、引っ越し難民となって初めて、トランクルームの存在に気付いた人も少なくないと思われる。実はトランクルームというサービスは、日本で急激な成長を遂げているのをご存じだろうか。

「アメリカではトランクルームの部屋数を全世帯数で割ると約10%、つまり10世帯に1室のトランクルームが存在する計算になります。オーストラリアでも4%という数字になるのですが、日本では0.3%、つまり300世帯に1室と低い数字です。都市圏に偏在していますから、『いまだにトランクルームなんて見たことがない』という方は現在でも相当な数になるでしょう。しかし今後、順調に認知度を高めるなどの改善が行われれば、アメリカと同水準の需要が生じてもおかしくないと考えています。」(同・萩原さん)

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