オウム死刑囚13人の同時執行は無理 法務省「7人移送」本当の狙い

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刑務官と死刑囚の間に生まれる深い“情”

 法務省関係者は「実を言うと、移送にはもう1つ、別の理由があるんです」と明かす。

「収監されている期間が長ければ長いほど、刑務官と死刑囚の間に深い“情”が生まれてしまうことがあります。かつて、死刑が近いという情報が確定死刑囚に伝わってしまったケースもありました。オウム死刑囚の執行には、可能な限り不確定要素を潰し、万全を期すことが求められます。13人の死刑が短期間のうちに執行されれば、刑務官の負担は相当なものであることは言うまでもありません。今回の移送は、東京拘置所の刑務官とオウム死刑囚の間に存在した、これまでの積み重ねを、他の拘置所に移送することでゼロにする、という目的もあるんです」

 中日新聞が91年5月22日に掲載した「命令出れば人命奪う… 元刑務官・板津さん 死刑執行の苦悩伝える 昇格、昇給 多くの人は本音言えず」で、元刑務官の板津秀雄氏(故人)が次のように語っている。

《刑の確定から執行まで数年。看守の勤務24時間、2交代制。家族と一緒の時間より死刑囚といる時間の方が長いくらいだから親愛の情もわく。

「ネコでもイヌでも3日も飼えば情が移るでしょう。何年も同じ屋根の下で同じかまのメシを食べた相手を『処刑にしろ』と言われるんですから、職員はたまったもんじゃありません」》(編集部註:引用に際し漢数字を洋数字に変更)

 さらにAbemaTIMESは17年7月14日、「『何十年も経ちましたが、全て鮮明に覚えています』元刑務官が語った死刑執行の瞬間」との記事を掲載している。そこには、死刑執行の“気配”を敏感に感じ取る刑務官の姿が語られている。
(https://abematimes.com/posts/2660403)

《死刑執行が近づくと刑場の清掃が行われるため、刑務官たちの間に“近いうちにあるのではないか”という噂も流れていた》

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