“リニア談合”の奥に知られざる「建築」VS「土木」

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土木が利益を底上げ

 大手ゼネコン5社のうちもっとも土木部門に力を入れているのが、“談合の仕切り役”と目される大成建設だ。経済誌の建設業界担当記者によれば、

「大成建設の売上高は建築部門が85・7%を占めているが、元々“旧大倉財閥”の土木部門が独立してできた会社。17年3月期決算で、営業利益は前期比19・9%増の1408億円と過去最高を記録した。その要因は土木部門の利益率18・9%で、他社とは比較にならない高水準です」

 そこで中堅ゼネコンの幹部がいうには、

「実は、建築より土木の方が粗利率が高いのです。建築部門の粗利率は8〜10%ですが、土木部門は10〜15%。上手くいけば、20%にもなる。リニア中央新幹線では、トンネル建設などが赤字になりかねないほど利益は薄い。それを利幅の大きい駅舎建設で取り返そうと考えて、4社は“談合”したのでしょうが……」

 リニア中央新幹線の品川や名古屋などの新駅舎は、地下30〜40メートルに設けられる計画だという。

「新駅は新幹線や在来線の下に作るので、トンネルを掘るのと同じ。それで建築部門でなく、土木部門が工事を担当しているのです。しかし、大きな利益を見込んでいた新駅舎建設も、難工事で経費が膨大にかさみ赤字寸前だと耳にしています」(同)

 大成建設にとって土木事業は“家業”であり、金の卵を産むニワトリかもしれないが、談合を否認し続けるのは得策とは言い難い。

「国交省が大成建設と鹿島建設の指名停止を検討しています。国発注の工事は、多くが土木事業で大きな利益が期待できる。談合を否認し続ければ、大成建設だけがより重いペナルティを科せられる可能性は否めません」(先の記者)

 18年3月期決算も、過去最高益を見込む大成建設。“談合決別宣言”と同じく、画餅にならなければよいのだが。

週刊新潮 2018年3月22日号掲載

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