難治「すい臓がん」治療の最前線 三次元放射線ビーム、早期発見“尾道方式”
生存率を80%にする「ステージ0」発見法
この項目に2つ以上該当した患者は、病院でMRIやCTによる検査を受ける。これで怪しいとなると、次に行うのが「EUS(超音波内視鏡)」による検査だ。EUSとは、先端に超音波装置を組み込んだ内視鏡で、胃まで内視鏡を送り込んでから、胃壁越しにすい臓のエコー検査を行う装置だ。胃から直接超音波を発信するので普通のエコー検査より格段に精度が高い。
「EUSでもがんの塊を見つけることができますが、それでも判断の難しい箇所があったら、最後にERCP(内視鏡的逆行性胆管すい管造影)を行うのです」(同)
ERCPは口から入れた内視鏡を十二指腸まで通し、そこから極細のカテーテルを、太さ1〜2ミリのすい管にまで送り込むというものだ。カテーテルから造影剤を注入し、すい管内のレントゲン撮影を行う。そして怪しい箇所が特定されたら、その部分の細胞を取って細胞診まで行う。
ERCPは入院が必要だが、ここまでやるとステージ0のがんを発見できる場合がある。ステージ0とは、すい管の上皮に極小のがんが認められるが浸潤がない状態を言う。手術をすれば完治できるレベルだ。
尾道方式の導入によって花田医師のグループは07年から15年までの間に432例のすい臓がんを発見している。そのうち、ステージIが36例、ステージ0が18例だ。
この成果は学会などでも注目されており、北海道帯広市、大阪市北区、熊本市などが「尾道方式」の導入を始めている。帯広市では、尾道方式に加えて「黄だん」や「腫瘍マーカー」もチェック項目に加えているという。
「がんの王様」を倒す試みは、ゆっくりとだが、着実に広がっているのだ。
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