難治「すい臓がん」治療の最前線 三次元放射線ビーム、早期発見“尾道方式”

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早期発見プロジェクト「尾道方式」

 がんと闘う技術は毎年のように進歩している。だが、すい臓がんの生存率は相変わらず低いままだ。前述の通り、自覚症状がほとんどなく、病院で見つかった時は手遅れというケースが後を絶たないからだ。

 ところが、「早期発見」を掲げて目覚ましい効果をあげている地域がある。広島県尾道市の「尾道方式」と呼ばれる早期発見プロジェクトだ。それによると「尾道方式」による5年生存率は20%超。全国平均と比べても3倍の成績である。しかもステージ0、ステージIという極小がんレベルでの発見例が相次いでおり、この段階で手術できれば5年生存率は7〜8割にまで跳ねあがる。

「もともと尾道という街は、地域の基幹病院と、かかりつけ医の連携が非常によく取れているんです」

 そう話すのは「尾道方式」の提唱者である、JA尾道総合病院診療部長の花田敬士医師だ。

「かかりつけ医は地元に密着しているので、患者さんのことをよく知っています。そこですい臓がんの危険因子とされるもので、2つ以上引っ掛かった方に、腹部の超音波検査(エコー検査)を受けてもらう。それで、少しでも異常があったら我々の病院に送り込んでくれる仕組みができているのです」

 その危険因子とは次のようなものだ。

・家族にすい臓がんを患った人はいないか。

・健康診断ですい臓に嚢胞(のうほう)が見つかっていないか。

・糖尿病を患っていないか。

・本人や家族が慢性すい炎を患っていないか。

・日本酒にして1日3合以上の飲酒をするか。

・喫煙はするか。

・肥満ではないか。

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