臓器が“カリカリ”になっても自覚症状なし… 「がんの王様」の恐ろしさ
熟練の技術が求められる手術
すい臓がんは転移も早い。年間100件以上のすい臓がん手術を手掛ける静岡がんセンター肝胆膵外科部長の上坂克彦医師によると、
「外来に“お腹が痛い”とか“背中が痛い”と言って駆け込んできた患者さんにすい臓がんが見つかった場合、経験的に言って9割は手術できません。がんそのものの痛みというより、すい臓の外にある痛みを感じる神経にまでがんが転移したことで痛くなっているからです」
発見の難しさもあって、手術が可能なすい臓がんは全体の3割程度。手術できたとしても、熟練の技術が要求される。
「すい臓のそばには十二指腸や胆のう、胆管といった重要な臓器があり、上腸間膜動脈、腹腔動脈などの大きな血管も走っています。胆管や、すい管の“再建”では、太さ2ミリぐらいの細い管をもれなくつなぐ技術が必要になってくる。すい臓の周囲の太い動脈にまでがんが広がっている場合には、抗がん剤や放射線治療後に手術をする場合があります。この場合、動脈の周りが硬くなっているので、たとえて言うなら豆腐に貼りついた岩石を、豆腐を傷つけずに剥ぎ取ってゆくのに似ている。こうした難しい状況の中で手術をしないといけない場合もあり、手術時間は時に10時間近くになります」(同)
つづく(下)では最新の治療法などについて紹介する。
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