臓器が“カリカリ”になっても自覚症状なし… 「がんの王様」の恐ろしさ
発見した時は「手遅れ状態」
「がんの王様」。それがすい臓がんの別名である。他のがんと比べても極端に生存率が低いからだ。
すい臓は胃の後ろに隠れており、バナナの葉のように横に細長い臓器だ。長さ約20センチ、厚さは2〜3センチほどと薄っぺらい。その中を「すい管」(主すい管)が通っており、十二指腸とつながっている。
すい臓の役目はまず「すい液」と呼ばれる消化液を作り出していることだ。すい液は、十二指腸に放出され脂質などを分解する。もうひとつの役目がインシュリンに代表されるホルモンの内分泌である。
このため、すい臓周辺は複雑な構造になっている。すい管のほか、肝臓につながる総胆管や細かな血管、リンパ管が網の目のように詰まっている。パイプが複雑に入り組んだ工場を想像すればいい。すい臓がんができるのは、主にすい管の部分である。
10年生存率でみると胃がんと大腸がんが7割近いのに、すい臓がんはわずか5・1%。進行がん(ステージIV)になると、0・3%にまで落ちる。発見された時点で手のほどこしようがないケースが多いのだ。すい臓がんが「がんの王様」と呼ばれるゆえんである。
「すい臓がんになった人の多くは早期の状態では症状がなかったり、特有の症状に乏しいため、すい臓がんと結びつきづらいことが診断の遅れにつながっています。そのため、すい臓がんは発見時、既に離れた臓器に転移を来たしていて手術できない状態のステージIVで見つかる割合が43%と最も多いのが現状です」(フェニックス メディカル クリニックの小島健司外科部長)
富山大学大学院消化器・腫瘍・総合外科の藤井努教授も言う。
「たとえば、すい臓がんが大きくなって『主すい管』が詰まると、すい液が流れなくなり、すい臓そのものが機能しなくなります。すると、臓器はカリカリの干物みたいになってしまうのですが、それでも自覚症状がないことが多い。チクチクと背中が痛むことはあっても“なんか変”という程度の違和感しかないのです」
人によっては、竹田氏のように尿が濃くなったりすることもあるが、決定的な症状ではない。
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