臓器が“カリカリ”になっても自覚症状なし… 「がんの王様」の恐ろしさ
早期発見と医療技術の進歩で、がんの死亡率は少しずつ減っている。ところが、時代に逆行するように死亡率が高くなっているのが増加の一途を辿る「すい臓がん」だ。今や3大がんの一角に食い込み、「がんの王様」と呼ばれる難治がんの最前線をレポートする。
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10年生存率5%「すい臓がん」を生き抜く術(上)
ジャーナリストの竹田圭吾氏が、身体の変調を覚えたのは、2013年の9月のことだ。顔に黄だんが出て、尿の色も濃いような気がする。そう感じた竹田氏が病院で検診を受けると、「すい臓がんの可能性が高い」と告げられる。
当時、テレビのコメンテーターとして活躍していた竹田氏だが、すぐに精密検査のために入院。医師からは“すい頭部(すい臓の入り口)にがんができており、ステージIII”と告げられた。すでにがん細胞が、すい臓をはみ出し周囲に浸潤を始めているレベルである。竹田氏は2カ月後に摘出手術を受ける。
『一〇〇万回言っても、言い足りないけど』(新潮社刊)で夫の闘病を綴った妻の裕子さんが振り返る。
「手術は、すい臓を丸ごと取ってしまい、胃の下や腸も少し切り取るというもの。9時間にも及ぶ大手術でした」
手術を終えた竹田氏は翌年、コメンテーターに復帰する。手術後の回復は順調に見えた。もちろん、その間も、抗がん剤治療を続けていたが、14年8月の検査で肝臓と肺に転移していることが分かる。
さらに強い抗がん剤を使わなくてはならなくなった竹田氏だが、次第に薬が効かなくなる。それでもテレビ出演は続けた。15年9月の「Mr.サンデー」(フジテレビ系)では、自らがんであることを公表したが、徐々に体力を失い、翌年1月、51年の生涯に幕を閉じた。
「最期は眠ったまま逝ってしまいました」(同)
竹田氏の場合、手術ができたことで仕事を続けられたのかもしれない。ステージIIIのすい臓がんは、手術が不可能なことも多く、5年生存率は6%しかないからだ。
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