「アンナチュラル」を正視できない慶応医学部 司法解剖の実績ゼロ
人気ドラマの影響で、業界はスポットライトを浴びることになったものの、図らずも表だってほしくない不名誉な事態も浮き彫りに……。慶応大学医学部の法医学教室といったら、かつては都内の司法解剖を数多く引き受ける名門だった。ところが、なぜか、ここ数年間に亘って、実績がゼロの状態にあるというのだ。
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石原さとみ主演の「アンナチュラル」(TBS系)は、変死体の解剖を行う架空の「不自然死究明研究所(UDIラボ)」を舞台に、死の謎を解き明かすという法医学の世界を描いた医療系ドラマ。
テレビ誌記者によると、
「他のドラマが五輪開催と重なり、軒並み視聴率が振るわなかったところへ、平均10%を維持。キムタク主演の『BG』や松本潤主演の『99・9』には及びませんが、大健闘と言えます」
実際の現場が抱える人手不足の問題など、この手のドラマで描かれたことのない部分に斬り込んでいることが、人気の要因だという。さぞや法医学関係者も、喜んでいるかと思えば、慶応大学に限っては、話が別だ。
「以前は東京23区の東半分を東大が、西半分を慶応が中心になって司法解剖を引き受けていたんですが……」
とは法医学会関係者。
「その頃は、慶応だけで年間50体ぐらい。ところが、2008年から減りはじめ、11年には解剖数ゼロになってしまいました。その後も数字は伸びることなく、14年から16年までは3年連続ゼロ。17年も同じ結果になると聞いています」
検察から司法解剖を依頼されるのは名誉に繋がる。ところがこんな惨状だから、慶応法医学教室の学生も当然ゼロ。リアル感満載のドラマなんて、正視できる状態ではないのである。
急激に数字が減った理由は、05年から教授に就任し、現在、法医学教室で唯一の教員、田宮浩二教授(55)=仮名=にあるという。
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