ディーン・フジオカ「モンテ・クリスト伯」は怖いモノ見たさ度1位! 春ドラマ9作を解説

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 月曜~水曜編に続き、コラムニストの林操氏による、春ドラマ予想というか、占いみたいな霊言の類……(本人談)。木曜~日曜までの新ドラマは、まずは文学好きにはたまらない「モンテ・クリスト伯」。岩波文庫で全7巻にもなる原作を、出演者でもスタッフの誰かでも、読み切った者はいるのだろうか?

 ではでは、林さん、どーぞ!

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「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」(フジ系・木曜夜10時~)

 今期、怖いモノ見たさ度でトップ!

 フランスの文豪アレクサンドル・デュマ(1802~1870)が19世紀半ば、ナポレオンの時代を背景に書いた名作を、なぜ今? それも時間を現代に、舞台を日本に置き換えて? さらには、タイトルは「モンテ・クリスト伯」のままで?

 その昔、NHKがやった「日本巌窟王」(79年)だって、舞台こそ日本ながら、時代は江戸期に設定していまいした。だって、無理が山積みだもの、 “冤罪により異国の地で15年もの投獄生活を送った主人公が、巨万の富を手に入れて母国に舞い戻り、自分を陥れた連中に復讐していく”なんて物語を、このICT(情報通信技術)とグローバリゼーションの時代に説得力ある商品に仕立てようなんて。

 しかも、主演は近ごろ何もいいところのないディーン・フジオカ(37)。それならば、フジ系の東海テレビが昼ドラ枠で作り続けてきた「新・愛の嵐」(02年)とか「真珠夫人」(同年)、「牡丹と薔薇」(04年)みたいに、底抜けにブッ飛んだ濃い物件になったら面白いぞという期待を胸に、スタッフ一覧をチェックしてみると、わりとフツーなドラマを淡々と作ってきた印象の人たちが多くて、膨らむのは疑問ばかりです。

 世の中には、観客や演者・スタッフ、そして出資者の全員が損をするとしか考えられない、ミュージカルとか現代劇とかってありますよね。フジの「モンテ・クリスト伯」には、ああいう“乗客・乗員、全員絶望”系のエンタメ物件の匂いがプンプンする。ワタシとしては、遠巻きに指の間から覗くくらいしか、対処の道がありません。実際に放送が始まってみたら大勘違いで大化けの大ヒット……という大番狂わせを、番組関係者とともに祈ってみたいと思います。

「執事 西園寺の名推理」(テレビ東京系・金曜夜8時~)

 八千草薫(87)が奥様役で、彼女に仕えるパーフェクトな執事が上川隆也(52)――これだけで十分でしょう。かつてフジに「わたしの可愛いひと」(86年)というドラマがあって、25年連れ添った夫の宇津井健(1931~2014)に愛想を尽かして別れた八千草が、15歳年下の三浦洋一(1954~2000)と出会って再婚するものの……という、よくできたコメディーでしたが、あの幸せな空気が再現されたら嬉しい。

 ミステリーには以前から、アイザック・アシモフ(1920~1992)の『黒後家蜘蛛の会』シリーズのように、脇役のはずの執事が謎解き役を務める筋立ての伝統があって、ドラマで言えば、去年の「貴族探偵」(フジ系)もその系列でした。テレ東の「執事」に期待するのは、ミステリーとしてはテレ東らしいユルさがあっていいから、若い演者がガチャガチャ騒ぎたてるのではなく、大人の視聴者がゆったり楽しめるコメディーになってくれれば……ということ。「三匹のおっさん」シリーズ(14~18年)に続く、テレ東の連ドラのヒット作だって目指せます。

 もっと贅沢を言うなら、隠し味程度でいいから、現実世界をクサすような毒まで盛り込まれていたら、「やすらぎの郷」(テレ朝系/17年)の味まで出てくるんですが、まぁこれは高望みがすぎる。背伸びをせず足元を固める作りになっていれば、この「執事」、時代劇が激減して寂しいとお嘆きの世代にこそ、お勧めできる作品になるという気がします。

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