武術家が指南する長生き健康法――「打撃武術」で健康+護身の一挙両得
武術家3人が指南! 万病を遠ざける「長生き健康法」(3)
中高年にもでき、年をとっても使える護身術。それで健康になっていけるのであれば、もはや言うことなしである。BUDO-STATIONで「マーシャルボディ」を創始した野沢靖尚氏が教授する打撃武術メソッドは、まさにそんな武術なのだ。
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私はタイの古式ムエタイという格闘技の身体操作を研究するうちに、マーシャルボディという打撃武術のメソッドを開発しました。それは、最新の運動理論を構築する川嶋佑氏が発見した「相対軸」と「内発動」を基にしています。
これまで、運動するときは体幹を保ってプレーするのが常識とされてきました。野球のバッティングにせよ、しっかりした下半身から上体や腕の運動が起こるという考え方です。このような体内に鍛えられた軸を中心軸と呼びます。ただ、中心軸があると身体は安定しますが、実はそれゆえに、大きな力や優れたパフォーマンスを生み出せません。特に強い相手と対戦したり、強いボールを受けたりする場合、自分のなかに中心軸を作ってしまうと、力やスピードが出せなくなってしまうのです。
こうした場面で、相手との関係性のなかで優れたパフォーマンスを生み出すのが「相対軸」です。たとえばサッカーボールを蹴る際、日本の指導者は、軸足を安定させたうえで、もう片方の足で蹴るように教えると思います。すると重心は軸足にあり、すべての力がボールに伝わりきりません。逆に、地面に軸足をつけず蹴り足だけで蹴れば、全荷重がボールにかかり、より強い力を与えられます。
このように、体に安定をもたらす中心軸に対し、不安定な体重の荷重を「相対軸」と呼びます。中心軸を保って衝撃を受け止める場合、自分の力より強いものを相手にするとつぶれてしまいますが、相対軸を使えば、自分自身が不安定なので、力をうまく逃がして対峙することができます。
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