志願者急増の「医学部」 その学費、将来性についての最新研究
東京・開成高校を卒業した生徒たちの昨春の進学先を見ると、1学年400人のうち、じつに80人以上が公立私立の「医学部」へ進学している。“西の雄”灘高校ではさらに医学部志向が強く、昨年の卒業生220人のうち、83人が医学部の道へ。医学部進学に特化した河合塾麹町校校舎運営チームチーフ・梅田靖彦氏は、志願者が急増しているという医学部入試について、こう解説する。
「日本には国公立大50校、私大31校、それに防衛医大を加え82校の医学部があり、1校あたりの定員が110名前後ですから、定員は全体で9000名ほどになります。しかも、この10年で医学部の定員はおよそ1800名も増えましたが、それを上回る勢いで志望者が増えています。志願倍率は昨年のデータで国公立大の医学部医学科が4・8倍、私立が18・5倍。他学部を含めた国公立大全体の倍率が2・8倍、私大が3・7倍ですから、医学部人気の高さがわかります」
ここ2、3年は人気が高止まりしている状況にあるものの、日本中の医学部が軒並み入学困難であることに変わりがない。開成や灘のようなトップ進学校の優秀な生徒が医学部を目指すのはわかるとして、また異なる流れもある。医学部予備校The Independent代表で『医学部バブル』の著書がある河本敏浩氏が言う。
「私立では慶應、東京慈恵会、日本医科の御三家に続き、大正から昭和初期にかけて多くの医学部が設立されました。それらは旧設医学部と呼ばれ、いまも難易度が高い。一方、1970年代に医学部の設立ラッシュがあり、それに伴って医師数が増加。85年には“一人医師の医療法人”が解禁され、その数は86年に179だったのが、2013年には4万を超えた。これら医療法人の子息が医学部に殺到しているのです」
こうして開業医の子息が押し寄せ、庶民には無縁だと思われがちな私大医学部だが、必ずしもそうではないことを説いていきたい。
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