武術家が指南する長生き健康法――心と体が若返る「股関節ストレッチ」
ストレッチを実践
では、歪んだ骨盤をどうやって矯正するか。まず肩幅より少し広く足を広げて立ち、骨盤に手を当てて5秒間、グーッと押し込みます(2)。押し込むのは、鏡の前に立ったとき腕と体が近いほうの骨盤です。記者さんなら右腰を左側に押し込みます。上半身を前後左右に傾けず、骨盤だけを反対側に押し込むのです。
毎日、隙間時間にこのストレッチを行えば、骨盤の位置が少しずつ正常な位置に整い、腰痛や鬱々とした気分が改善されます。腰痛を患ってから病院に行っても、歪みを根本的に解決するのは難しい。ストレッチを通して、自分で体の歪みを治すのが一番です。
もう一つの矯正方法は2人で行います。仰向けに寝て、長いほうの足を引っ張ってもらうのです。筋肉は引っ張ると元に戻ろうという作用が働くので、それを利用して、足をポンッと引っこ抜くように引っ張ります。このストレッチで足の長さは元に戻ります。
加えれば、カバンなどは骨盤が寄っているのと反対の手で持つといい。記者さんなら左手です(3)。荷物を持つと、バランスをとるために体が荷物を持つ側に寄るからで、子供や大きな荷物を抱えるときも、同じ側を使うのがよいです。
いま腸が注目されています。腸は第二の脳と言われ、自律神経と深く関わっているので、腸を支える骨盤がズレていて頭脳明晰な人は少ないのです。また体の各部は連動しているので、骨盤が歪んでいれば、バランスをとるために肩や首、あごなどにズレが生じ、ほかの部位にも不調を来たします。膝の痛みにせよ、骨盤や股関節の歪みと連動して起きているのです。
ですからストレッチが重要で、それによって股関節や骨盤が整い、神経が解放されて表情が明るくなります。血色がよくなって肌もきれいになり、結果的に若々しく見える。骨盤を整えることは、心までさわやかになるアンチエイジングの方法なのです。
私が考案した「骨盤職人」という、骨盤周りの筋肉をほぐす器具も紹介しましょう(4)。骨盤のすぐ下に木製の突起を当て、足を左右に揺らすと(5)、硬くなった筋肉がほぐれて骨盤の位置が正常に戻り、腰痛などが改善されます。阪神タイガースの選手は大抵持っているし、ダルビッシュ選手が所属していたテキサス・レンジャーズからも、10台の注文がありました。
武術では「心技体」という言葉が使われます。実際、心のありようによって技術的、体力的な面が変化すると捉える人は多い。しかし逆に、体に技術を覚えさせて、脳や心でも動きを捉えられるようになる、という側面もあります。「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、好きで一生懸命取り組んでいても、やる気が起きないことはある。こうしたとき、心と体と技術、すなわち心技体を結び付けるのが骨盤なのだ。私はそのように考えています。
(2)へつづく
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