日本記録「設楽悠太」の異端ぶり 大会後にビールと“じゃがりこ”

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“記録より勝負”

「“なぜ30キロしか走らないのか?”と訊くと、設楽は“僕には必要ない”。更に問い詰めたら、こう言いました。“疲れるから”と」

 およそマラソン選手とは思えない発言だが、これで驚いてはいけない。

「今大会後、テレビ出演などを終えた設楽は、コンビニで“じゃがりこ”とカップ麺、コーラとビールを買って帰宅したとのこと。そういえば去年の東京マラソンでは、“今晩、友達と飲みに行くのを楽しみに走った”なんて言ってました。今どきのアスリートは食事にうるさいですが、レース前はともかく、普段の彼は不摂生そのもの。理由を訊くと“我慢したくないから”ときっぱり言ってました」

 彼のメソッドでもう一点“異端”なのが、公務員ランナー・川内優輝のように頻繁にレースに出ること。

「なんでも“土日にやることがないと、昼まで寝て、夜は飲みに行ってしまうから”だそうです」

 我々が思い描くマラソンランナーの理想像を完膚なきまでに叩き壊してくれる。

「レース終盤は“沿道の声援が支えになった”と月並みなことを言ってましたが、ここに彼の“哲学”があります。すなわち“どんな練習をしても30キロ以降辛いのは同じで、最後は気持ちで走るしかない。ゆえに、練習で30キロ以上走ることに意味はない”というのです」

 単に記録だけが目的なら、正確にラップタイムを刻むための40キロ走が有効なのかもしれない。だが、

「設楽は“記録より勝負”の男。なので、勝負勘を養うべく実戦を重んじるのです。以前、大一番前の小レースに出る設楽に“今回はどんな調整を?”と尋ねたら“調整じゃありません。いつも全力です”と窘(たしな)められたことがありました」

 当たり前だが、ただの“ゆとり”ではないのだ。

 8月にジャカルタで行われるアジア大会には国内の有力選手がエントリーする見込みだが、設楽は出ない。

「代わりに9月のベルリンマラソンに出ます。“暑いところで走りたくない”なんて言ってますけど、おそらく“アジアで勝つより、アフリカ勢が集う世界レベルで戦いたい”が真意かと」

 日本実業団陸上競技連合が日本記録更新者に用意した褒賞金1億円をゲットした設楽だが、それも彼には余禄でしかなかろう。目指すは月桂冠! 挑戦は続く。

週刊新潮 2018年3月8日号掲載

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