“捏造”中毒の厚労省、受動喫煙データでも 数値を80倍に盛る

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「4畳半に10人の喫煙者」

 つまり、そんな喫煙環境はこの世に存在せず、同時にそれに伴う受動喫煙被害もあり得ないのだ。事実、受動喫煙について研究している秋山幸雄・元産業医科大学准教授(安全衛生マネジメント学)は、

「厚労省がニコチン濃度を測定した条件は非常に現実離れしている印象を受けます。高濃度が出るような特殊な環境で測定したのではないでしょうか」

 として、こう解説する。

「私が以前読んだ論文の実験では、窓を10センチほど開けた車の運転席で、1時間に3本の紙巻きたばこを吸った場合、同条件の13台の車内平均ニコチン濃度は60マイクログラム/立方メートルでした。この実験条件も、かなり煙のこもった環境と言えるでしょうが、それですら『60』。厚労省の『1000〜2420』という数値は、窓を閉め切った4畳半ほどのとても狭い空間に10人の喫煙者を詰め込み、一斉にたばこを吸ってもらいでもしないと出てこないでしょう。しかしそんな状況は、現実社会にはあり得ないですよね。結論に向けたシナリオが最初からあり、それに合うデータを求めて実験がなされたのではないかと邪推してしまいます」

 前出の厚労省関係者が後を受ける。

「かつて、たばこ製造工場で急性ニコチン中毒になった作業員が労災認定されたことがありました。その時のニコチン濃度は300〜1700マイクログラム/立方メートル。今回厚労省が出した数値は、これを上回る濃度です。たばこ製造工場という特殊な環境で急性ニコチン中毒が労災認定されるほどの喫煙空間……。一般社会のどこにそんな環境があるでしょうか。この労災の話も、厚労省のホームページの〈受動喫煙対策〉とは別のコーナーに掲載されていて、厚労省が知らないはずがない。彼らは『確信犯』なんです」

 秋山氏が続ける。

「数値の異様な高さ以外に、実験環境が〈換気のない狭い室内で喫煙した場合〉とあるだけで、どのような広さでどう行われた実験だったのか、具体的なことが明らかにされていないのも問題です。これでは、別の研究者が検証できません」

〈狭い〉とは何平方メートルだったのか。〈喫煙した〉とはどれくらいの時間をかけて何本吸ったのか。それを示さなくていいなら、どんな数値を作り出すことも可能だ。世間ではこうした手法をインチキと呼ぶ。例えばこんなケースが起きたら厚労官僚たちはどう思うだろうか。

 裁量労働の問題でも受動喫煙の問題でも、厚労省はデータを「イジる」集団でろくでもない。いっそのことなくしてしまえ。そう考えた政治家が「厚労省廃止法案」を提出したとする。彼は厚労官僚がどれだけ出来が悪いか、データを提示することを考える。

 2対6対2。一般に、組織で仕事が「出来る人」と「普通の人」と「出来ない人」の割合はこうだとされる。厚労省といえども、この比率はさして変わりはしまい。そこで、その政治家は思いつく。同省の各部署の選りすぐりの出来ない人を「狭い室内」に集め、ホラ、厚労省の「出来ない人割合」はこんなに「高濃度」ですよと――。

 ***

つづく(下)で加熱式の数値についても検証する。

週刊新潮 2018年3月8日号掲載

特集「働き方改革だけではない “捏造”中毒の『厚労省』は受動喫煙データもインチキだった」より

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