田中邦衛は“洗練されてない不器用さ”を演じていた? 「せんだみつお」が語る昭和のスター列伝
ゴマをすらない
せんだ:そう考えると、五郎さんに代表されるような“頑固一徹な不器用な人”のイメージがついている邦さんだけど、実は役者としてはすごく器用な人なのかもしれないね。そう、“洗練されてない不器用さを演じる器用さ”を持った役者なんだよ、おそらくは。
あ、でもね、業界内でのおつきあいとかに関していえば、みなさんが抱いているイメージの通りかもしれない。あの方、プロデューサーにも監督にもいっさいゴマをすらない人だったし、業界の人とのおつきあいってほとんどなかったみたいなんだ。僕も知り合ってから長いけど、お宅にお邪魔したことはあるものの、一緒に飲みに行ったことはないし、そもそもお酒を飲まない方だったと思う。あと、邦さん、現場には自分で車を運転して、一人でやってくるんだよ。付き人も付けずに。デ・ニーロもそうなんだって。かっこいいよね。そういう諸々を総合すれば、一匹狼的な存在だっていえると思う。だからみんなにビックリされたんだよ。「あの邦さんが5回もお見舞いに来てくれたの?」って。
――やっぱり「オレはよぉ……大っ嫌いだからよっ!」というのは「大好きだからよっ!」の意味だったんですよね。
せんだ:みんなには「でも病院と邦さんの家、近かったんだろ。じゃ、帰るついでに寄っただけだよ」って言われたけどね……ナハ!
(取材・文=塚田泉)
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