田中邦衛は“洗練されてない不器用さ”を演じていた? 「せんだみつお」が語る昭和のスター列伝

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「おまえのこと大っ嫌いだからよぉっ!」

せんだ:そうそう、映画やドラマで何度もご一緒させていただいたけど、邦さん、楽屋でもどこでもあんな感じなのよ。ほら、僕は萬屋(錦之介)さん主演の時代劇「破れ新九郎」(78)で邦さんとも共演してるじゃない。半年間、週2回ぐらいの頻度で収録してたんだけど、あのドラマの楽屋ではいっつも、そこにいない人の悪口を言ってみんなで喜んでたの。「邦さんの演技はワンパターンですよね!」とか。そしたらある日、「ちょっとここ座れよぉ! 聞いたんだよ旦那(萬屋のこと)によぉ。オレのことワンパターンだって言ってたんだろ!」って、あの口調でね。それを見てまた喜ぶのよ、みんなが。

――その邦衛さんは真面目に怒っていたんですか?

せんだ:それがよくわかんないんだよねぇ。みんなを楽しませるための芝居のような気もするし。そういえば、あのときも怒ってたな。あるとき環七で邦さんのBMWを見かけたんだ。で、(邦さんだ! イタズラしてやろうかな)と思ってさ、邦さんの車を煽ってガーッと追い越したのよ。そしたら猛スピードで追っかけてきて「せんだー! テメェこの野郎ぉ!」って(笑)。

 お宅を訪ねたときにこんなことを言われたこともあったな。「おまえよぉ、オレのこと嫌いなんだろぅ?」って言うから「いえいえ、邦さん大好きです!」って言ったら「オレはよぉ……おまえのこと、大っ嫌いだからよぉっ!」って。やっぱりあの口調でね。またそれがジョークなのかどうかわからない顔して言うんだよ。それにさ、ほんとに嫌いだったら、僕が入院してる病院に5回もお見舞いに来るかな? 

――せんださんの第1次黄金期を終焉に導いた、1978〜79年にかけての入院のときですか?

せんだ:うん、昭和53年から約半年ね。そして第2次黄金期はいまだに訪れていないという……ってことはいいんだけど、肝臓で入院してんのに、邦さん、お見舞いにケーキをたくさん持ってきてさ。「この人病院食、食べてるんですからね!」って看護婦さんに怒られて「あぁはぃ、すんませんでしたぁ……」ってしょんぼり、謝ってたよ(笑)。

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