初対面は全裸だった!! 高倉健さんの「素顔」 「せんだみつお」が語る昭和のスター列伝
そのままの健さん
――“せんだみつおが選ぶ高倉健映画ベスト3“を挙げていただきましょうか。
せんだ:いきなり1位から言っちゃうけど、なんといっても「網走番外地」。シリーズが始まったのは中学の頃だったんだけど、新作が公開されるたびに、その頃住んでた荻窪の映画館で見ていたよ。
――高倉健を大スターに押し上げ世の男性たちを心酔させた「日本侠客伝」(64~71)や「昭和残侠伝」(65~72)シリーズよりも上なんですね。
せんだ:角刈りの健さんが振るう刀は妙にリアリティがあって怖かったんだ。実は僕、臆病者なんだよ……。で、先を急ぐけど第2位は「幸福の黄色いハンカチ」(77)! 任侠イメージのついた健さんの転換点ともいえる東映退社後の作品だけど、たぶん意図して挑んだふつうの男の役がまた、人間臭くてすごくいいんだよね。次! ごめんなさい、本当に個人的すぎる理由から、3位はやっぱりタロジロの「南極物語」(83)だな。あんなに泣いた映画は珍しいから。
――どのあたりに泣いたのですか?
せんだ:それはもうあの樺太犬たちが1年ぶりに帰ってくるところだよ! 僕、樺太生まれだから“樺太犬”ってところにも反応しちゃったのかな? 僕は本来映画を見て泣く方じゃないんだ。でも動物が出てくるともうダメなの。「エイリアン」でも、リプリーがエイリアンの子供と別れるときにぎゅ〜ってするでしょ。ああいうときの動物の気持ちってすごくわかっちゃうんだよ。
――エイリアンも動物に入るんですね!
せんだ:入る入る。僕にとって喋れない生き物って、ぜんぶ可愛そうなの。ゴジラなんかが戦う姿だって可愛そうで可愛そうで――。
――あの……健さんとまったく関係ない話になってますよ!
せんだ:「南極物語」、健さんももちろん素晴らしかった。芝居感がまったくなくて。そもそも芝居の上手いヘタで語る存在ではないんだけど、僕が特に好きなのは芝居感がないときの健さん。そういう意味では遺作となった「あなたへ」(12)もよかったよね。あれはまさに“あの年の高倉健そのままの姿”だったと思う。そんな健さんを見ながら思い出したのが、笠智衆さんの「冬構え」(85年、NHK)なんだ。
――せんださんが笠さんを乗せるタクシー運転手として出演したドラマですね。
せんだ:笠さん演じる老人が、奥さんを亡くした後、退職金を全部持って旧友を訪ね歩く話なんだけど、もしかしたら健さん、これがやりたかったんじゃないかなって。少なくとも、死期を悟って覚悟する中、人生を振り返りながら最後に自分ができることはなんだろうかと考える――みたいな感覚は、あのときの健さん自身の境地でもあったんじゃないかなと。「あなたへ」を見ながら「冬構え」のことも思い出しつつ、そんなふうに僕は感じていたね。
(取材・文=塚田泉)
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