“3人に1人は社外取締役”の新ルール 人事抗争が無意味に?
次期社長には誰が就くのか。本命は剛腕で知られる副社長で、対抗馬は国際派の専務、そして大穴は社長子飼の常務。仕事の能力よりも、自分が属する派閥の“領袖”次第で大きく左右されるのがサラリーマン人生だ。森信親長官率いる金融庁と、東京証券取引所は、そんな日本型経営を破壊しようとしている。
「今年から厄介なルールが導入されます」
こう溜息を漏らすのは、大手化学メーカーの総務・人事担当役員だ。
「金融庁と東証は、“2018年版コーポレートガバナンス・コード”に社外取締役の割合を全取締役の3分の1以上にするよう求める新ルールを導入します。だが、これ以上取締役会に“ヨソ者”が顔を出してほしくないのが本音です」
コーポレートガバナンス・コードは企業が順守すべき統治指針で、金融庁と東証が3年前から経営の透明化を目的に運用を開始した。経済ジャーナリストの福山清人氏によれば、
「コーポレートガバナンス・コードに強制力はありません。ですが、東証はルールを守らない企業の社名とその理由をHP上に公表する場合もあります。すでに、社外取締役は“2人以上で、主要取引先の元役員などでないことが望ましい”と謳っています」
17年時点で、社外取締役を2人以上置いているのは東証一部上場企業2021社の88%に上り、一見、役所の“命令”には従っているようにも見える。全国紙の経済部記者が解説するには、
「ここ数年、神戸製鋼のデータ捏造など企業の不祥事が絶えません。そこで金融庁と東証は“外部チェック”をさらに強化して、不祥事を未然に防ごうとしているのです。不正会計が発覚した東芝は、経営の透明性をアピールするために、役員10人のうち社外取締役が6人。そのなかには、経済同友会トップを務める大物、小林喜光氏も含まれています」
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