福山雅治マンハント「×」で、染谷将太KU-KAIは「△」 日中合作映画の厳しい現実

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日本人観客と「日中合作映画」の相性

 だが現実は厳しい。そもそも日中合作映画と聞いて、どんな映画作品を思い出されるだろうか。オールドファンなら「未完の対局」(82年/東宝)や「敦煌」(88年/東宝)が浮かぶかもしれないが、近年は印象に乏しい。JETRO(日本貿易振興機構)が日経BP社の資料を基に、2000年代の合作映画を並べているので表として引用させていただく。

「全部知ってるよ」と胸を張る方は、よほどの映画通だろう。あの高倉健(1931〜2014)が主演の「単騎、千里を走る。」(日本公開06年/東宝)ですら、中国では期待通りのヒット作となったが、日本では「7億円前後」(日刊ゲンダイ)と苦しい興行成績に終わった。どうも日本の観客と「日中合作映画」は相性が悪そうなのだ。

期待が集まった福山雅治「マンハント」だが……

「国が近く、同じ東アジア文化圏に属していても、当然ながらヒット作の傾向は異なります。近年、中国ではCGやアクションを多用した超大作が人気ですが、日本はアニメと漫画ヒット作の映画化作品が観客を集めます。それでも08年と09年に『レッドクリフ』(東宝東和/エイベックス)のパート1、2が日本でも大ヒットし、興収100億円を突破しました。後に続く作品が期待されていましたが、10年に尖閣諸島中国漁船衝突事件が発生。政治的な関係が一気に冷え込み、双方の映画界にも影響が出ました」(前出・大高氏)

 影響で製作中止に追い込まれたのが「一九〇五」(13年/松竹)だ。黒沢清監督(62)に、主演は松田翔太(32)と前田敦子(26)と決まっていたにもかかわらず、撮影の遅延で製作会社が破産してしまう。他にも流れてしまった企画は相当数にのぼるようだ。

 こうした経緯を踏まえると、「KU-KAI」のヒットは、日本映画界がようやく尖閣問題のダメージを回復しつつあると見ることも可能かもしれない。とはいえ、コンスタントなヒット作を量産するなど、夢のまた夢だ。「KU-KAI」と好対照な興行成績に終わりそうなのが2月9日に公開された「マンハント」(GAGA)だ。

 上記の「レッドクリフ」や「ミッション:インポッシブル2」(00年/パラマウント)などハリウッドでも活躍するジョン・ウーが監督(71)。文革直後の中国で、文字通り全人民が熱狂した高倉健が主演の「君よ憤怒の河を渉れ」(佐藤純彌監督/76年/松竹)をリメイクした。日本側主演は福山雅治なのだから、期待が集まって当然だろう。

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