いじめによる自殺は「殺人」か? 社会の闇に切り込む「アンナチュラル」第7話
生き延びろというメッセージ
いくら時代が変遷しても、こんなにも学校でのいじめがなくならないのはなぜだろう。考えてみた。私が10代だった頃にも、そうした類いのものはあった。女子校だったので、暴力的な行為はなかったけれど、不登校や転校していった生徒のことは記憶にある。しかし、自分でもショックだったのは、今回の放送を観るまで「私はそのことを忘れていた」ということだ。人は成長すれば学校を卒業する。卒業してしまえば、いじめの加害者のことも被害者のことも、傍観者だった自分のことも、当事者として思い出せなくなってしまう。今回の放送を観て、十数年前の記憶が鮮烈に蘇ったとともに、今、この瞬間にもいじめられることが怖くて学校に行けない子どもがいること、あるいは気丈に振る舞って登校し続けている子どもがいることに思いを馳せ、打ちのめされた。その思いは視聴して数日経った今も消えない。
「アンナチュラル」を観ている子どもの中にも、いじめに苦しんでいる者がいるのではないだろうか。脚本家・野木亜紀子はそのことを想定していたはずだ。だからこそ、ミコトに「あなたの人生はあなただけのものだよ」という言葉を言わせた。これは深い励ましであると同時に、残酷な真実でもある。救えなかった友人のために死のうとする白井。そして既に死んでしまった横山。そんなことをしても何にもならない、生き延びろ、と強いメッセージを送る制作班の思いを感じた。
そして、高校の職員室から離れられないミコトの代わりに、白井の居場所を突き止め、彼の自殺を止めたのは中堂だった。この時、彼は「俺は三澄先生の仲間だ」と言った。初めて中堂が、ミコトに「先生」と敬称を付け、ひとりの少年を救おうとした人間らしい一面を見せた瞬間だった。
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