なぜ芸人は裸になるのか――ここ数年の“裸芸人ブーム”を演芸評論家が読み解く

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低予算で高視聴率という現実

 ビートたけしといった大御所が裸になれば、誰もが拍手喝采を惜しまない。師匠の元で辛い修行を積み、才能を爆発させた個人史の重みも伝わるからだ。対して裸だけが頼りの若手芸人の笑いは貧しい。だが吉川氏は、芸人に同情的だ。

「落語でも漫才でも、しっかりとした笑いを提供するには最低でも10分間が必要です。ところが最近は、そんな悠長なことは言っていられません。プロデューサーは芸人に『3分間で笑わせろ』と求めます。気の利いた台詞で流行語大賞を狙うならまだしも、何もない芸人は裸になるしか手はないでしょう。テレビの笑いは制作者側が8割、演者が2割の責任というのが私の持論です。もっとテレビ局は、芸人に本当の笑いを求めるべきです」

 それが実現すれば、大阪の小学生が危惧したテレビ離れも未然に防げる――いやいや、やはり現実を変革するのは、どこの世界でも難しいようだ。

「芸人側も、もう少し自浄作用を発揮すべきだとは思います。もっとベテランが裸芸を批判すべきなのですが、とはいえ、実際は厳しいものがあります。何しろお笑い番組はドラマに比べて予算を抑えることができます。それで視聴率を15%も取れば、今のプロデューサーなら鼻高々でしょう。プロデューサーと芸人のどちらが偉いかは言うまでもありません。だから最後は視聴者の責任です。もっとレベルの高い芸を視聴者が求めなければ、何も変わらないということです」

 たまの休日、テレビを消して寄席に出かけてみてはどうだろう。次の週末、裸芸人にテレビで再会したら、ずいぶんと感想が変わるかもしれない。ただ寄席の場合、テレビとは比較にならないほど強烈な下ネタを披露する芸人もいたりするのだが……。

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週刊新潮WEB取材班

2018年2月25日掲載

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