JR宗谷本線「除雪ラッセル車」撮影が大人気で人口“764人の村”の経済効果

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鉄オタによる村おこし!?

 鉄道ファンでなくとも、写真の素晴らしさは同意してくださるだろう。JR北海道・宗谷本線(旭川駅——稚内駅)で除雪作業に励むラッセル車の雄姿を収めたものだ。

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 撮影場所は音威子府村(おといねっぷむら)。道北に位置する、北海道でも有数の豪雪地帯だ。村の公式サイトには「北海道で一番小さな村」とある。注目は人口だ。2018年1月末現在、男398人、女366人、合計764人。

 過疎に悩む村が今、鉄道ファンの熱い注目を浴びている。その理由が、ラッセル車だ。その撮影のため、全国から鉄道ファンがカメラを担いで駆け付ける。つまり“撮り鉄”たちだ。彼らによる村おこしの期待も高まる。村役場に、まずは経緯を訊いた。

「数年前から、ラッセル車の撮影のために、村を訪れてくださる方々が目立つようになってきました。というのも、車両の老朽化が進み、新型への交換が現実味を帯びているからです。『最後の勇姿を撮影したい』と考えておられるのだと思います。全国の豪雪地帯でラッセル車は運転されていますが、夜間や不定期運行が大半だそうです。日中に定期運転しているのは宗谷本線だけで、必ず自然光で撮影できます。これも大きなポイントのようです」

 その“撮り鉄”だが、週末や土日などは30人ぐらいに達するという。人口の3%に該当するので、これは大きい。

「ファンの皆さんは、撮影ポイントに車で移動されます。ガソリンスタンドで給油の需要が生まれます。また、音威子府駅の立ち食い蕎麦店『常盤軒』は非常な人気で、こちらで食べてくださる方も少なくありません。こうした経済効果をさらに増やしていこうと、私たちも模索を続けています」(同・村役場)

 ちなみに常盤軒は「日本最北端の駅そば」とも言われる。麺の真っ黒な色が迫力で、蕎麦好きにもファンが多い。

鉄道の街という歴史

 具体的な取り組みとしては、例えば村の有志が「鉄分撮りすぎ注意キャンペーン」を実施している。鉄道撮影ではトラブルが発生することも少なくない。まずは撮影マナー向上をステッカーの配布などでPR。その上で関連グッズを販売し、さらに————

【1】SNSで応援メッセージや写真を「#頑張れ宗谷本線」のハッシュタグで投稿するように呼びかけ

【2】JR音威子府駅での切符購入、村内での給油、住民保養センター天塩川温泉での日帰り入浴や宿泊などに対し、記念品をプレゼント

といったキャンペーンを実施している。

「鉄道あっての村おこしです。ラッセル車の撮影で村を訪れられたら、音威子府駅で入場券も買ってくださると嬉しいですね。もちろん、宿泊してくだされば最高です」(同・村役場)

 不安な点がないわけではない。ラッセル車が新型への交代間近だから撮影客が増えたわけで、実際に代替わりとなると、鉄道ファンの数は減るかもしれない。

「最悪のシナリオとして、半減も覚悟しています。とはいえ、“日中にラッセル車を撮影できる全国唯一の場所”であるのは事実です。さらに音威子府駅は、『特急が停車する駅の所在地として日本で一番人口の少ない自治体』というランキング1位も持っています。もともと音威子府村は交通の要衝として栄え、人口の3割が国鉄職員とその家族という時期もありました。国鉄の街として発展し、赤字路線の廃止や業務縮小で人口が減少したという歴史があります。鉄道ファンに興味を持ってもらえる要素は少なくないはずです」(同・村役場)

 この記事を作成するにあたり、週刊新潮WEB取材班はラッセル車の動画も入手した。さる鉄道ファンによると「お手本クラスの素晴らしいクオリティ」だという。

 そこで今回、その動画をYouTubeにアップすることにした。こちらをクリックしていただければ、動くラッセル車を目の当たりにすることができる。迫力を体感し、音威子府村を訪れたいと思ってくだされば幸いだ。

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