「エモやん」語るスキルス胃がん闘病(上) “蕎麦事件”で発覚、胃の全摘手術を受ける

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「そんなに詳しくは聞いていない」

 胃がんと分かった時は、もちろん「ええ??」と驚きはしました。だって、腫瘍マーカーで異常はなかったんですから。とはいえ、それほどショックを受けたわけでもありませんでした。「自分のところにも来るものが来たか」っていう程度です。僕ももう70歳ですし、この年齢になると周りにもがんの人って結構多いですからね。

 胃の全摘手術を受けたのは去年の6月でした。僕の場合、がんが胃の真ん中にあったから全摘になったんです。上のほうにがんがある人は胃の上だけ、下のほうにある人は下だけ切ればいいそうなんだけど、真ん中にあるとダメらしくて。ただ正直に言って、そんなに詳しくは聞いていないんです。だってこと細かに話を聞いたところで、がんが治るわけじゃないですからね。全て先生(医者)に任せますと。

 手術は4、5時間かかったんですが、家族には「1時間くらいで戻ってきたら危ないから」と伝えておきました。開腹してみて、がんがいろいろなところに転移していたら、1回閉じて、抗がん剤でがんを小さくし、それから手術をし直すとか、そういうことをやらないといけないらしいんです。幸いなことに、僕には転移は見られず、手術した先生も「がんは全部取りました」と言っていました。

 手術後、おかゆなんかに慣れるためにしばらく入院したとはいえ、7月頭には退院。一応、7月いっぱいは仕事を休みましたが、8月中旬頃からはもう普通の生活ですよ。ごく小さながんの卵みたいなものがリンパに飛んでいたとしても、それを初期段階で潰してしまうために、予防的な意味で抗がん剤を打っていますが、それももうすぐ終わる予定です。食事も、胃がないので一度に多くの量は食べられないけど、先生は「好きなものをどんどん食べないと痩せ衰えますよ」と言っているので、食べたいものを食べています。

 確かに、85キロくらいあった体重が、手術後は67キロまで減ってしまった。今は75キロまで戻しましたが、まあ食べることが一番の薬だと思っています。実際、退院直後に「ケンタッキーフライドチキン」に駆け込みましたからね。病院の食事に慣らされると、ああいうジャンクフードが無性に食べたくなるんです。酒も煙草も元々やりませんが、好きだったコーヒーも飲んでいるし、お声が掛かれば銀座にも繰り出している。そこで、粋(いき)に「ウーロン茶の水割り」を嗜(たしな)んでいます。

(下)へつづく

週刊新潮 2018年2月15日号掲載

特集「闘病手記 スキルス胃がんにも達観 5年生存率10% 『江本孟紀』球界への遺言」より

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