長寿世界一のイタリア「チレント」地域 “三大疾病”“アルツハイマー”が極端に少ないワケ

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「地中海式ダイエット」発祥の地

 地中海食は「地中海式ダイエット」という名で、日本を含む世界中で、たびたび流行してきた。実は、その発祥の地が人口200人ほどのピオッピである。

「アメリカの生理学者、アンセル・キーズ先生がピオッピを訪れ、みな健康なのに驚き、この地域の食を研究して世界に発信し、有名になったのが地中海式ダイエットです。ご自身もピオッピに移住し、04年に101歳で亡くなりました」

 そう語るのはキーズ氏の運転手を務めた、ピオッピ在住のアンジェロ・モリネッリさん。

「ここの人は、みなストレスがないから」

 と話すアンジェロさんに案内されてピオッピを歩くと、ある家の前で2人の高齢女性が談笑していた。マリア・ディリエンソさん(90)とジョヴァンナ・スカローネさん(91)。

「神様のおかげでずっと健康で、薬なんて飲んだことないよ。いまも周りは仲間ばかりで、毎日、踊って歌って楽しい、楽しい」

 そう語るジョヴァンナさんは、心底楽しそうだ。その隣の家では、3月に95歳になるルイーザ・ソダーノさんが迎えてくれた。

「カタクチイワシなどの青魚のほか、野菜や豆をたくさん食べてきました。パスタも食べます。魚はオリーブオイルをかけ、オレガノをまぶしてオーブン焼きやソテーにします。ミントも使います。でも、塩は少なめで、甘いお菓子もあまり食べません」

 やはり、お手本のような地中海食である。窓の外には、ティレニア海のパノラマが広がる。

「みんなと話すのが大好きで、それに毎日このパノラマを眺めているから、ストレスなんて溜まりません」

 この地域の高齢者からは、コミュニティの大切さも教えられる。健康寿命日本一の山梨県で「無尽」と呼ばれる同好組織が盛んなのと似た話ではないか。

「アッチャローリやピオッピから学ぶことは多いと思います。田舎に住んでいれば、家庭菜園を作って作物を交換し合ったりできるし、高齢者が行政の子育て事業に携わるシステムができれば、役割を担って生きがいを感じることができる。大事なのは、コミュニティに参加し、メンバーとして活躍することです」

 山梨大学医学部の山縣然太朗教授はそう話す。地形や気候が日本と遠くないイタリア。イワシなどの青魚を多く食べ、エゴマ油がオリーブオイルの代わりになる日本の食習慣も、チレントに通じるところがある。真似できるところは少なくなさそうだ。

 ***

(3)へつづく

週刊新潮 2018年2月8日号掲載

特集「現地取材 米伊の研究チームが争って調査を始めた! 長寿世界一のイタリア『チレント』地域に学ぶ」より

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