“火薬庫”バルカンで燻る「マケドニア」国名論争

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 バルカン半島と言えば「欧州の火薬庫」が枕詞。その南端に位置するギリシャと、北隣のマケドニア共和国が“国名”で激しく争っている──。

「旧ユーゴスラビア連邦が内戦で崩壊したのがきっかけ。連邦内の共和国の一つだったマケドニアが独立して以来、もう四半世紀もこの争いは続いているんです」

 と言うのは、中欧・ギリシャ地域のある研究者。

「『マケドニア』は、古代以来のギリシャ北域の地名。この地の王家に生まれ、やがて一大帝国を築いたのが、あのアレクサンドロス大王。一方、マケドニアと古代から呼ばれていた地域は、ギリシャだけでなく現代のマケドニア共和国やブルガリアなどにも跨るのです」

 もっとも、古代マケドニア王国の首都ペラを始め、その大半は現在のギリシャの領土。勝手にその名を使うな、との反発も無理はない。

「このギリシャの反対があるため、マケドニアはNATOやEUにも加盟できません」(外信部デスク)

 国連にこそ加盟しているが、その国名もじつは正式に認められていない。

「暫定的に“FYROM(フィロム)”と呼ばれています。“The Former Yugoslav Re­pub­lic of Macedonia”の略で日本の外務省も『マケドニア旧ユーゴスラビア共和国』としています。しかし、ようやくマケドニアが国名を変更する方向で問題を解決する気運がたかまり、今年に入って国連の仲介も本格化しています」(同)

 現地の報道によれば、「マケドニア共和国」の前に「新(ニュー)」「上(アッパー)」「北(ノース)」などを付け、独占感を緩和したネーミングを内々に検討中。

 だが、同時にナショナリズムも頭をもたげてきて、両国各地で大規模な反対集会やデモが起きている。

 火ダネは燻っているのだ。

週刊新潮 2018年2月15日号掲載

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