北朝鮮の平昌五輪参加は昨年から決まっていた――文在寅大統領の「親北トンデモ外交」
連日、平昌五輪の話題が世間を賑わせている。各国のメダル争いもさることながら、北朝鮮団と韓国団が「統一旗」を掲げ入場した開会式や、金正恩の妹・金与正の訪韓、五輪史上初となった女子アイスホッケーの南北合同チーム「コリア」など、日増しに「政治ショー」の色が濃くなりつつある。当初は不参加を表明していた北朝鮮。今年に入って劇的に参加が決まったように報じられてきたが、それは茶番だった、南北の間では、北朝鮮が正式な参加表明をする以前から、水面下で秘密交渉が行われていた――龍谷大学教授の李相哲氏はそう解説する。(以下「新潮45」3月号、【特集】「非常識国家」韓国 「自滅に向かう『親北トンデモ外交』」(李相哲)より抜粋)
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北朝鮮との秘密交渉
文政権の対北朝鮮「外交」も透明性を欠く。北朝鮮が平昌五輪に選手団を派遣することを正式に表明し、韓国と合意文書を交わしたのは1月9日だ。しかし、その合意はセレモニーにすぎない。事前の水面下交渉で取引があったという決定的な証拠が出てきたのは、つい最近の1月31日だ。韓国政府は昨年暮れに北朝鮮と航空機管制権移譲に関する合意書を交わしていたのだ。平昌五輪とは関係ないものと否定するが、密かに何らかの準備を始めていたのは間違いない。
韓国政府が「大邱航空交通センター」を新設したのは、昨年12月初めのこと。新設のセンターが「平壌管制センター」と「南北間管制権移譲」について話し合い、合意文書に署名したのは12月25日だ。
金正恩委員長が新年の辞で平昌五輪への参加を表明する6日前のことだ。そして韓国がアメリカ政府と国際社会の懸念を他所に、合同訓練目的と称してチャーター便を使い、北朝鮮の馬息嶺スキー場に選手団を送ったのは1月31日だ。
韓国政府がチャーターしたアシアナ航空所有の飛行機は、馬息嶺スキー場にほど近いガルマ飛行場へと飛んだが、大邱航空交通センター管轄の朝鮮半島東空域を通るルートを使った。韓国の航空機が北朝鮮に乗り入れするには様々な問題が絡む。軍事境界線を通るため航路については軍当局の承認が不可避だ。今回、利用したのは、それを避けるルートで、事前協議なしでは不可能なことだ。
つまり韓国は、選手団派遣について合意文書を交わすまえに移動手段について水面下で合意していたのだ。1月9日の南北高位級代表会談は世界を欺くためのセレモニーだったととらえられても仕方がない。これまで韓国政府関係者が北朝鮮当局者と、トルコのアンタルヤ、ロシアのウラジオストク、中国の昆明、北京で接触を続けてきた事実も徐々に明らかになっている。いまのところ文政権がその場で北朝鮮に何を約束したかは、明らかになっていない。
韓国未来経営研究所所長、黄長洙(ファンチャンス)によれば、「馬息嶺スキー場での合同練習は口実で他に明らかにできない理由がある」
今回、北朝鮮に飛んで行った専用機に誰が乗り込み、何を積んだかも韓国政府は明らかにしていない。
帰り便には北朝鮮の五輪参加選手を含む32名の北朝鮮関係者が乗りこんだ。その中の20人あまりは政府関係者のはずだ。アメリカがそのような韓国の動きを知らずにいたとは思えない。
アメリカは韓国が五輪で韓半島旗を掲げようが、合同チームをつくろうが、実務者会議を行おうが、それは韓国が判断すべきことだという立場だ。北朝鮮に納得できない譲歩や国際的な対北朝鮮制裁基調を揺るがすような支援は(北に)しないという原則さえ守ればよいという態度を見せながらも、この茶番劇については「金正恩が平昌五輪のメッセージをハイジャック(拉致)しないか深刻に懸念している」(23日付ワシントンポスト、ペンス副大統領)とみる。
マクマスター国家安保補佐官は23日「対話で成功できるという幻想を通じ現状を維持しようとする北朝鮮の術中にはまらないだろう。(我々は)過去の過ちを繰り返さないだろう」とも言った。
アメリカメディアは「最初は、平昌と平壌の発音が似ていたので五輪を見に間違って平壌に行ってしまうかもしれないと冗談を言ったが、いまはどこで開催されるのかとは関係なく、五輪はますます“北朝鮮のショー”になりつつある」(ウィークリー・スタンダード)と報じた。
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全文は「新潮45」3月号に掲載。文政権の外交政策を中心に、慰安婦問題への対応や、UAEを激怒させた理由、中国と交わした3つの約束、トランプ政権との関係などを詳しく報じる。また、同特集では他にも「歪んだ教育が生む『選民意識』の国民たち」(室谷克実)、「『願望』史の国」(八幡和郎)など、「非常識国家」韓国を多角的に分析する。