ボンカレー50周年「知名度90%超」CMのないロングセラー商品の意外な悩み
誰もが知る商品だからこその悩み
大塚グループはボンカレーの開発に際し、基本的には特許を取得しなかった。自社が小さな市場を独占するより、競合他社の参入で市場を拡大させる道を選んだのだ。
この方針がどれだけ正しかったかは、スーパーやコンビニでレトルトカレーが置かれた棚を見れば簡単に分かる。レトルトカレーの購入額は現在でも右肩上がりとなっており、17年に初めてカレールーの市場規模を上回った。
ところが認知度が9割を超えると、大塚食品には新しい悩みが生じる。例えばテレビでCMを流しても、誰も注意を払ってくれない。「あ、ボンカレーだ」で終わってしまう。
「弊社は電子レンジ対応を進めてきました。ボンカレーでは03年に初めて商品化し、13年以降は沖縄限定版を除き、全てのボンカレーを電子レンジ対応にしました。しかし、どれだけテレビCMを放送しても、パッケージに大書しても、電子レンジ対応の認知度は5割前後のままなのです。いまだに多くのお客様が、お湯で温めておられます。他にも保存料や合成着色料を全く使っていないことと、16年から野菜を国産化していることも、もっと皆さんに知ってほしいポイントです」(同・広報室)
こうした背景から2013年後半にボンカレーはテレビCMから撤退する。代わりにWEB動画に傾注すると、内容が高い評価を受けた。広告費を6割削減し、なおかつ販売増を達成している。ロングセラー商品だからこそ、極めて大胆で先進的な取り組みも求められる。ビジネスパーソンにとっては非常に興味深い“逆説”だろう。
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