ボンカレー50周年「知名度90%超」CMのないロングセラー商品の意外な悩み
世界初のレトルトカレー
ボンカレーが初めて発売されたのは1968年2月12日。つまり今年で50周年を迎えたわけだ。シリーズ累計で約30億食を販売、認知度は90%超という超ド級のロングセラー商品。しかし当初は販売不振で、社員の奮闘が続いたことは意外に知られていない。
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ボンカレーの発案者は、故・大塚明彦(37〜2014)氏だ。大塚グループの二代目社長・大塚正士(16〜00)氏の長男。76年に大塚製薬の社長、08年に大塚ホールディングスの初代会長に就任した。アイディアマンで、ポカリスエットやカロリーメイトの生みの親としても知られる。
発端は64年。関西でカレー粉などを製造販売していた食品会社が経営不振に陥り、大塚化学薬品(当時)の傘下に入り、大塚食品工業(同)としてスタートする。大塚化学薬品は化学製品のほか、オロナミンCの製造も手掛けていた。
大塚食品工業にとって、先行の大手カレーメーカーは文字通りのガリバー。例えばハウス食品は前年の63年にバーモントカレーを発売。大ヒットさせている。
当時の明彦氏は、大塚製薬の徳島工場で責任者を務めていた。「ライバル社と同じことをしても勝てない」と考えていたところ、さるアメリカの雑誌が目に留まる。記事に「缶詰に代わる携行食品として、真空パック詰めのソーセージが開発された」とあった。たちまち「この技術を使えば、お湯で温めるだけでカレーが食べられる」と閃く。提案するとゴーサインが出たが、世界のどこにも先行例は存在しない。
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