今度は「ワクチンは無意味」と言い出した近藤誠 そのウソを暴く

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もう少し広い視野で…

〈麻しんウイルスが排除された日本では、やめたほうがいいワクチンです〉

 麻疹は非常に感染力が強く、空気感染(飛沫核感染)するので、手洗いやマスクで予防できません。確かに日本は、2015年3月に世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局から「麻疹の排除状態」と認定されました。風疹も含む混合ワクチン2回接種法による対策の恩恵だといえます。とはいえ、グローバル社会ゆえに、水際で食い止めることはそう容易いことではありません。実際、昨年も200人近い麻疹感染者が国内で確認されているのです。特にアジアではインド、中国、ヨーロッパ地域ではイタリア、ルーマニアなどで対策が遅れ、感染者がいまだに少なくない。日本を訪れる外国人観光客が過去最高を記録し続けるなか、一人ひとりが麻疹対策へ積極的に関心を示すべきです。

〈麻しんワクチンの副作用としては、脳炎やけいれんなど、脳の症状が重大です〉〈急性脳症を起こすと、全員に何らかの重大な後遺症がのこり、最悪の場合は死にいたっています〉

 こんなふうに近藤氏は麻疹ワクチンへの恐怖を煽りますが、副反応としての脳炎・脳症の発生は100万〜150万人に1人以下の頻度。もちろん、いくら稀な事象であっても、万が一起きた場合の救済策は不可欠です。

〈先進国では、麻しんで死亡する可能性がほぼないため、ワクチンの必要があるかは疑問です〉

 本当にそうでしょうか。麻疹に感染すると、免疫抑制が引き起こされます。そして、麻疹以外の別のウイルスや細菌による感染症が重症化することで、肺炎や脳炎で死亡するケースがあります。中には、亜急性硬化性全脳炎という悲惨な合併症に苦しんでいる患者さんもおられます。実際、国立感染症研究所の報告では、先進国であっても麻疹患者約1000人に1人の割合で死亡する可能性があるようです。国内でも00年前後の流行期に年間約20〜30人の死亡が確認されています。以上より、近藤氏は、もう少し広い視野で事実をみるべきでしょう。

(下)へつづく

大場大(おおば・まさる)
東京オンコロジーセンター代表。1972年、石川県生まれ。外科医、腫瘍内科医。医学博士。東大医学部附属病院肝胆膵外科助教を経て、2015年、がんのセカンド・オピニオン外来を主とした「東京オンコロジーセンター」を開設。著書に『がんとの賢い闘い方「近藤誠理論」徹底批判』(新潮新書)、『大場先生、がん治療の本当の話を教えてください』(扶桑社)などがある。

週刊新潮 2018年1月25日号掲載

特別読物「インフルエンザ大流行をどうする!? 今度は『ワクチンは無意味』と言い出した『近藤誠』――大場大(東京オンコロジーセンター代表)」より

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