過労死の先にある真相を探る! 石原さとみ主演「アンナチュラル」第4話
労働者たちの未来を守る戦い
一話完結の本作は、毎回、家族の在り方やジェンダーの問題などがテンポ良く折り込まれている。それらの問題提起および設定を、ストーリーを進めるためだけのコマとして消費しないのが本作の脚本の良いところで、きちんと登場人物ひとりひとりの生き方に必然性がある。責任回避を貫こうとする工場長にも大切な家族があり、実は誰よりも残業していたことが明らかになる。
そんな中、今回は佐野の小学生の長男(藤村真優)の存在に注目したい。父の死の責任をなすりつけあう醜い大人たちの争いを目の当たりにし、傷ついた長男は、父の製造したケーキを販売する店舗の窓ガラスに石を投げる。その目は、父を奪われ、大人たちを誰も信用できなくなった淵に立つ暗さをたたえていた。ただの子どもからの目線で視聴者の同情を買うのではなく、2018年現在、過重労働が蔓延しているこの社会が、彼らが大きくなる頃には少しでもよくなっていてほしい、と願わずにはいられない。ミコトは第1話で「法医学は未来のための仕事」と宣言したが、「アンナチュラル」制作陣からも「テレビドラマ作りは未来のための仕事」という声が聞こえてくるようだ。すなわち、現在の社会問題を描き、後世に遺し、未来を良いように変えていくキッカケとなること。
ミコトたちによる詳細な解剖の結果、佐野は1カ月ほど前に起こした事故の外傷により動脈が裂けており、今回の事故がキッカケとなってそれがくも膜下出血を起こして、死亡したことがわかる。佐野が外傷を負ったのはお祭り、花火の夜のことだったと可奈子は回想する。
ここへ来て、久部がバイクを運転できるという設定が絶妙に生きた。ミコトに「バイクの車体からなら事故現場の成分が検出できるかもしれない」と提案したり「左腕を擦過するならこんなふうに倒れるはず」などと、バイク乗りならではの感覚で、彼が事件解決への道を切り開いていく様子が描かれた。知らず知らずのうちに、ミコトの影響を受け、久部が自分の生き方を見つけていくであろう過程も本作の見どころと言える。
[2/4ページ]