名護市長選敗北でも「たたかいつづける」 日本共産党の極論体質を古谷経衡が斬る!
勝つまであきらめない
4日に投開票が行われた沖縄県名護市長選挙で、与党が推薦した候補が勝利したことは、「基地絶対反対」の野党側に大きなインパクトを与えた。
選挙の結果判明後、日本共産党の志位和夫委員長は、「選挙結果は、名護市民が辺野古新基地を受け入れたことを意味するものでは決してありません。基地のない平和な沖縄をつくるたたかいはこれからです!」とツイッターで表明した。
また同党の小池晃書記局長もツイッターで「勝つ方法は、あきらめないこと。」とつぶやいている。
いくら不本意でも、選挙結果はある程度重視すべきだろうし、あきらめないことは大切にしても、その前に敗因をきちんと分析したほうがいいのでは……というのが一般的な感覚だろうが、余計なお世話というものか。
おそらく、こうした不変のファイティングポーズこそが、同党の根強い人気の源であろう。
速報「娘はフェイク情報を信じて拒食症で死んだ」「同級生が違法薬物にハマり行方不明に」 豪「SNS禁止法」の深刻過ぎる背景
速報「ウンチでも食ってろ!と写真を添付し…」 兵庫県知事選、斎藤元彦氏の対抗馬らが受けた暴言、いやがらせの数々
極論の温床
もっとも、そこにこそ問題がある、という見方も存在している。
著述家の古谷経衡氏は、新著『日本を蝕む「極論」の正体』の中で、日本共産党を「極論」を生みだす典型的な存在だと分析している。古谷氏は、「外部から監視や点検がなく、競争のない閉鎖的な空間」から極論は生み出され、その空間を体現する代表的政党が日本共産党だと見ている。
もちろん、党員や支持者からすれば「極論なんて失礼な! 正論だ!」と反論もあるところだろうが、古谷氏は同書の中で共産党の主張してきた大企業批判や「憲法9条」に関する議論の矛盾、誤りを厳しく指摘している。さらに、共産党にシンパシーを持つ人たちの集会に行ったレポートも寄せている。「外部」の人たちはあまり目にする機会が少ない集会の模様を同書から紹介してみよう。
2年ほど前、古谷氏が訪れたのは、「九条の会」だ。
「『九条の会』とは読んで字のごとく日本国憲法第9条を護持する目的で結成された在野の市民団体だが、実質的には日本共産党の強い影響力下にある関連組織の性格が強い。
東京西部の、1000人は入るだろう大規模な市民ホールを貸し切って行われたその大会は、異様そのものであった。
『アベ政治を許さない』と打刻されたワッペンを胸に付けた高齢の参加者が、口々に安倍政権打倒と平和憲法の護持、そして日本共産党支持を訴えている」
紙芝居販売中
この会場で売られていたのが、「『戦争する国』にさせてたまるか!」というタイトルの紙芝居。A3クラフト紙、片面カラーとはいえ20枚に満たない紙芝居の値段は3500円だ。
紙芝居といっても内容は刺激的である。「アベ政権呪詛の言葉」が羅列されているのだ。
「忘れもしません。昨年(2015年)の9月19日。『戦争法案』の採決が強行されました。(中略)
憲法を踏みにじり、日本を『戦争する国』につくり変えるやり方は、ナチスドイツの独裁者になったヒトラーそっくりです。結果は、600万人のユダヤ人を殺し、ヨーロッパを戦場にしてしまいました。
ヒトラー独裁の根拠となったのが、向こう4年間ヒトラーに『白紙委任』するという『全権委任法』です。結果は、民主的といわれていたワイマール憲法を崩壊させることになりました。
いま、安倍首相は、『熊本地震』を口実にして、憲法に『緊急事態条項』を入れようとしています。大災害を理由に『権力を集中』させようと考えているのです。何からなにまで、ヒトラーにそっくりです」(紙芝居「『戦争する国』にさせてたまるか!」九条の会東京連絡会刊)
紙芝居ということは、これは子供にもアピールするためなのか。その真意は定かではないが、これに対して古谷氏はこう批判する。
「安倍首相や政権を批判するのは言論の自由であり大いに結構であるが、さすがに世紀の悪漢ヒトラーとアベを同列視するのはナンセンスの極みである。
ヒトラー率いるナチス党が共産主義者やユダヤ人や障碍者やロマ・ジプシーを殺し、ソ連を屈服させて東方にゲルマン人の生活圏を拡大させようとバルバロッサ作戦(独ソ戦)を発動したのは疑いようのない歴史的事実であるが、安倍政権にはそのような気宇壮大な民族的構想を有した権力志向の意図は微塵もない。
そればかりか、この総会ののち1年を経ずして、森友学園疑惑、加計学園疑惑で支持率が急落し、岸田派(旧宏池会系・保守リベラル)の閣僚を大幅に取り入れた内閣改造人事を経て、ようやくその支持率が40パーセント台中盤くらいにまで回復したのは周知の通りである。
『4年間白紙委任』どころか、任期3年の自民党総裁の3選すら危うい、といわれた時期もあった。
『独裁』の文字はどこへ消えたのだろうか。安倍首相がヒトラーと同様の独裁者なら、親衛隊を使ってそのような疑惑を武力で強引にねじ伏せて闇に葬ったことであろう。『国会議事堂放火事件』(共産主義者がドイツ国会議事堂を放火したとして、ナチス党が共産党弾圧に利用した。だが、実際には自作自演だった)に代表される謀略工作、メディアの支配や圧力などがヒトラーの一八番である」
安倍=ヒトラー説は共産党の安倍批判、政権批判に頻出する極論だが、このくらい偏っていた方が、共産党の固定支持者500万を束ねるのにはちょうど良い塩梅なのである、と古谷氏は分析している。
それにしても「勝つまではあきらめない」とか「紙芝居」とか、奇妙なことに、同党がもっとも嫌うはずの戦時中をどこか想起させるワードが出てくるのは皮肉な話ではないか。