心ある大人がため息をつく… 安倍政権「働き方改革」のトホホな実態
メガバンク、広告代理店の“嘆き”
「残業が厳しく管理され、夜は会社に残りづらくなりましたから……」
と言うのは、さるメガバンクの行員。
「下っ端は前日、仕事が終わらなかった場合、始発などで翌日に早朝出勤してこなすようになりました。夜の分が朝に付け代わっているだけです。管理職も悲惨で、部下の残業が多いと叱責されるため、彼らの分まで仕事を請け負うことも。また、国際マーケットの担当者も大変です。17時にはロンドン市場、23時にはニューヨーク市場が開く。マーケットに合わせて顧客や海外の会社とのやり取りもあるんです。でも残業が無理、となれば、自宅で国際電話やパソコンを通じてやらざるを得ない。家に子どもがいれば、物音で起こしてしまったり、泣き出してしまったり……相手にそれが伝わって呆れられたりで、効率は最悪です」
別のメガバンクの行員も、
「外資系金融機関の人などはみんな嘆いていますね。彼らは大抵、まず外資の日本支社へ就職。バリバリ働いて、アメリカの本社へ行き、トップに上り詰めるぞ、と猛烈に仕事をしてきた人たち。それが日本だけ労働時間に規制をかけられると、外国のライバルに太刀打ちが出来なくなる。“なぜ国のせいで自分の野心が妨げられないといけないのか”と憤っています」
金融機関の中で「モーレツ職場」の象徴と言われていたのが、野村證券。
「実は意義ある仕事がしたい、やる気ある社員の多くは、働き方改革は迷惑だ、と思っています」
と、同社の幹部が言う。
「実務自体は減らないワケです。でも、労働時間を減らされているのですから、こなせる仕事の量は減る。それに加えて、安倍政権は賃金を3%アップしろ、でしょう。経営的に成立するワケがありません。戦後の日本は資源もない中、懸命に働くことで発展してきたし、今後は少子化で、ますますそれが求められるのに、これでしょう。優秀な人材は全部外資系に転職してしまいかねません。今度の改革で一番得をするのは外国企業ではないでしょうか」
「働きたい人」の権利侵害だ、と言うのである。
先に述べたように「電通ショック」で風穴を開けてしまった広告代理店にしても、さる関係者は言う。
「もともと電通はクライアントの要望に滅私奉公で応え、信頼を勝ち得てきた企業。今は深夜業務が原則禁止なので、クライアントの事務所に行って、そこで机やパソコンを借りて“残業”をした、なんて笑い話があります」
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