放置すれば腸に穴が開く! 大腸のカビが「がん」「認知症」の原因だった

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大腸のカビが「がん」「認知症」の原因だった――ファストロ滋子(上)

 腸が見直されている。単なる消化器官にとどまらない最大の免疫器官で、脳にも影響をおよぼし、腸内環境が悪いと老化にも直結する――。ところが、そんな腸にカビが繁殖するという。しかも放置すればそこから穴が開き、毒素が漏れてしまうというのである。

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 一晩しっかり寝ても疲れがとれない。便秘と下痢を繰り返している。花粉症や鼻炎に悩まされる。風邪をひきやすい――。日ごろこんな症状に心当たりがある人は、驚かれると思いますが、多くの場合、腸にカンジダ、すなわち「カビ」がいます。人間の体内は温度や湿度が適度で栄養もあるため、じつはカビが繁殖しやすいのです。

 事実、ドイツの研究機関の調査では、成人の約70%は腸にカビがいるといいます。特に、日ごろ不摂生をしている人、 偏食気味の人、メタボリック症候群の人などは、腸にカビがいるかもしれません。

 想像しにくいかもしれませんが、水虫の原因の白癬菌もカビの仲間です。口内にもいて、特に歯周病がひどい人は多くの場合、カビが悪さをしています。口腔は消化管を通じて腸とつながっていますし、歯ぐきの血管を通しても、カビとその毒素は腸や全身に運ばれていきます。

〈ファストロ氏は元来が歯科医だが、口腔は腸管とつながっており、結果として全身に影響を与えることから、腸内改善やデトックスに関連した予防医療に取り組んでいる。〉

 もっとも、カビは人の体の表面や消化管、粘膜などに普通にいる常在菌で、普段は悪さをしません。ところが、カビのなかでもカンジダ・アルビカンスと呼ばれるものは、体調が悪かったり、免疫機能が低下したりしていると増殖し、感染症を引き起こすなど、身体に悪影響を与えます。

 その一部が冒頭で述べた症状です。鵞口瘡(がこうそう=口腔カンジダ=)や女性の膣カンジダも、カビによって引き起こされる感染症です。

「第2の脳」

 さて、腸のカビは腸内フローラ(腸内細菌叢)を乱し、腸の機能を低下させますが、およぼす悪影響はそれだけではありません。腸のカビが原因で起きる典型的な症状が、リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)です。これは簡単にいうと、腸管壁に微細な穴が開いて、そこから細菌や毒素、食物などが漏れだすことによって起こる症状。「リーキー」は漏れること、「ガット」は腸のことです。

〈「カンジダが腸内で繁殖し、リーキーガット症候群につながっている例は、しばしばみられます」

 そう指摘するのは、新宿溝口クリニックの溝口徹院長。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎氏によれば、

「臨床現場では、大腸内にカンジダが存在する場合があることはわかってきましたが、ほとんど議論されていません。しかし、順天堂大学とヤクルトの共同研究で、健康な人で50人に2人、糖尿病患者は50人に14人、血液中に腸内細菌が見つかりました。原因は私が“腸もれ”と呼ぶリーキーガット症候群です」〉

 あらためて腸の大切さを確認しておきましょう。栄養の消化や吸収だけでなく、免疫、解毒、ビタミンの生成などに携わっている腸には、食物のほか細菌や毒素も流れこみます。現代社会では食物に汚染物質や残留農薬、食品添加物などがふくまれ、それらは口から消化管を通って腸に達しますが、腸はそうした有害物質をブロックするバリア器官としても働いています。

 つまり有害物質が腸に達すると、腸上皮細胞がそれを検知して解毒酵素を誘導し、毒素を分解して便とともに排出してくれます。このように、腸は解毒の観点からも重要です。

 脳内ホルモンを分泌することからも、腸の大切さがわかります。脳内ホルモンとは、脳の神経細胞に信号を伝える神経伝達物質のこと。そのうち、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは90%が腸に存在し、腸内の細胞で作られ、その合成に腸内細菌がかかわっています。セロトニンは、睡眠をつかさどるメラトニンというホルモンにも変化します。腸が「第2の脳」と呼ばれるのはそのためです。

 ところが、腸のバリア機能が弱まって腸管壁に穴が開くと、有害物質やアレルゲンは血管を通って全身をめぐります。また、肝臓にはそれまで以上に有害物質が流れこみ、負担がかかります。これが不調や病気の原因です。

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